春風、吹き荒れて
□第零章
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プロローグ
桜咲く、春は入学の季節。
神田家の三女、末っ子である瑞樹は市立桜蘭学院幼等部へ入学した。
人懐っこいわけではない瑞樹は基本的に一人で人間観察をして悪態づいている暮らしをしていた。
彼女の見た目にも問題はある。顔が見えるとモテるからお父さん心配!という父の言葉により目が隠れるくらい長い前髪にボサボサのミディアムヘアである。
春が大好きな瑞樹といえど、そんな格好をさせられてははしゃぐこともできず、あまり好きじゃない夏は黒いオーラがとび、秋になったかと思えば父がニューヨークから帰ってきたため落ち着けず、雪景色だけは好きな冬になった。そんなことがもう二回も繰り返され、年々黒いオーラが増えていくのはここだけの話。
瑞樹が幼等部に入って二年、五歳の冬。
そんな時、いつものように無駄に元気に外で遊んでいるクラスの子でも観察しようと外へ出たら、特等席のベンチが双子に取られていた。
少しムッとしながら、譲ってくれないかたのみに行くと、女の子と双子が話していた。
「「じゃあ、どっちが光でどっちが馨か、わかる?」」
「・・・え?み、右が馨君で左が光君?」
そう女の子が言うと、悲しそうな今にも泣きそうな顔をしている双子がなぜかほっておけなくなって
『ちがうよ。逆』
つい、声をかけた。女の子は慌てて謝って去っていったけど、双子はベンチに座ったまんまで。仕方ないから今日は図書室で本でも読もうかと、背中を向けると
「「ねぇ、どっちが光君かゲームしない?」」
と、声をかけられた。だから
『しない。2人はそっくりだけど別人じゃん。全く違う人ってわけじゃなくても違う人なんだから見分けるゲームなんてくだらないもの、しない』
そういって、双子から離れた。
それがはじまり。
でも、軽くかかわって、名前で呼ぶ中になっても所詮は友達で。それ以上へと進む物語はそれから十一年後に動き出すことになる・・・。