ご趣味は何ですか?

□五発目
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災害レベル鬼。
最初はB級ヒーローとA級ヒーローの数名が向かったが返り討ちにあったようだ。
向かったのはS級ヒーローのゾンビマン。
死んでも死んでも復活する。それがヒーローネームの由来だ。
ゾンビマンの戦闘スタイルは泥臭いものだった。
何度も死んで、何でも生き返って、相手が疲れてきたらトドメを刺す。
今回は3回死ぬぐらいで済んだことに安心した。
怪人に、斧を振り下ろす。しかし──怪人が消えた。
斧の刃先は地面に刺さっている。
何が起きた?
ゾンビマンは周囲を見渡す。すると驚いた光景が目に留まった。
女の子が仮面を被っている。
小さな細い腕で、怪人を抱えている。
現実なのか、復活した際に目玉を上手く再生できなかったのか。
瞬きを数回。現実の光景だ。


「誰だ」


ゾンビマンが言う。


「趣味で怪人をやっている者です」


そう言った瞬間、名無しさんは怪人をボールのように投げた。
そして、一発のキック。
怪人は泡を吹いて動かない。気絶しているようだ。
ゾンビマンは、似合わない汗をかいていた。
目の前にいる人間、いや怪人の強さが測れなかった。

──怪人を助ける、変な仮面を被った奴がいる

協会から言われたことを思い出した。
大した被害は出ていない、危険なことをしているわけでもない。
協会からは簡単な注意喚起しかされなかった。
しかし、いざ目の前にしてみるとどうだろう。忘れていた恐怖が思い出されるような、絶対的敗北を味わせられるような。
斧を持つ手が、震えてしまう。
以前聞いたことがある。なんとS級4位のアトミック侍が一発で倒されたと。
勝てるのか? 俺で。
心配と不安と恐怖が、ゾンビマンの胸の内をかき混ぜる。
名無しさんはゾンビマンを見つめているだけだ。特に攻撃しようとしていない。
それでもゾンビマンは警戒をとかない。
先に攻撃するか? いや、避けられたらどうする? 攻撃してきた隙を狙うほうがいいのでは?
様々なことを考えていると、名無しさんが動いた。
消えた、どこに? 名無しさんの速さをゾンビマンは視認できない。
まずい、まずい!! そう思っていると、名無しさんは目の前にきた。
全身の毛が、いや、内臓までもがのけぞるような感覚。
思わず目を瞑ってしまったのは、条件反射だっただろう。
しかし、思っていた衝撃がこない。
その代わりに、下半身に何かかけられたかのような感触。
おそるおそる目を開けると、目の前には変な仮面。
下半身には目の前に立つ怪人が着ていたコートが巻かれていた。


「あの、その……ヒーローも大変ですね……」


ゾンビマンは今起こっていることを理解しようと頭を回す。
えぇと、コイツは何故下半身にコートを巻いた?


「大変でしょうが、頑張ってくださいね……!!」


そう言って怪人を抱えてどこかへ行ってしまった。
ゾンビマンは未だに斧を構える姿勢から動けない。
ゾンビマンのコートの下は丸出しだ。
戦って死んで生き返る。生き返るのは自身の身体だけだ。洋服も蘇るわけない。
勝利する時はいつも全裸なのは、もう慣れたものだと思っていたけれど。
斧を下したのは、恥ずかしさが全身に回ってからだ。
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