超お家帰りたい星人

□第三等星
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「名無しさん、今日から貴様は俺のペットだ。だから俺を退屈させるなよ?」


そう微笑して優雅な手つきで首をなぞっていた手はいつのまにか私の手錠と足枷を壊していた
ボロスは握っていた手をゆっくりと開く
そこから零れ出る鎖の破片
見ていてゾッとするものだった
余裕そうに笑っていたボロスはしゃがんでいたのを立ち、背を向ける


「ほらさっさと立て。行くぞ」


扉へ向かって歩き始める
だが私は動けなかった
何のつもりだろうかこいつは
だが・・・今は大人しく従ったほうがいいというのは誰が見てもわかる
ここが何なのかわからないし、どこなのかもわからない
とりあえず言うことを聞くとしよう
認めたくはないがペットということは長らくここに滞在してしまう可能性がある
悔しくて歯を食いしばりながら立った
が、しばらく座ってたせいもあるし今まで起こったことが唐突すぎて、普通を超えすぎてて脳に血液が回っていなかったらしく前へよろめいてしまった
血だまりの床へ突っ込んでしまう
全身が鉄の匂いに染まった


「何をやっている。早くしろ」


屈辱だ。羞恥だ。
手を差し伸べてくれるわけでもなく、もらったのは呆れた目だけだった
クソ。クソ。クソ。クソ。
心の中で浮かぶ限りの暴言を吐きながら両手を床へつけ立つ
そのままボロスの白いマントの傍まで歩み寄った


「それじゃあここの片付けは頼んだぞ。ゲリュガンシュプ」

「了解しました」


ボロスと一緒にドアをくぐった




シンとした冷たい廊下を歩く
響くのはボロスの靴のヒールの音だけ
不気味なほどに反響する
顔や腹に血がしたたり気持ち悪い
自分はこれからどうなってしまうのだろうか
ペットということは嗜好品のひとつだ
さっきのこの男の残虐性を見たら最悪の未来が予想できた
もう胃に何も入ってないだろうに吐き気が襲ってくる
そうなる前にどうにかしなくては
・・・あれ。今私は手足が自由だ
それにボロスは私に背を向けている
ということは、


「逃げられるかもしれない」


首だけを動かし私のほうへ振り返った


「とでも思っているのだろう」


ひとつしかない目を細めながらそう言った
治まった震えがまたしてもひどくなる
見透かされている―
いや、見透かされているというよりは思考を読まれていると言ったほうがいいかもしれない
歩いてる足がうまく動かない


「クク。ここまで来て逃げようと思ってるとは・・・。いいだろう、逃げて見ろ」


あぁこいつは何もかもわかっているんだ
その上で逃げて見ろなんて言っている
逃げられるものならな、とも言われているようだった
結局逃げることもできないままボロスの言うがままに歩いた
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