世知辛いヒーロー業界3

□ごっこ遊びは
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"怪人ごっこ"


「言ってくれるじゃねぇか」


ガロウにとって、最大の侮辱。
骨が折れようが、顔中血だらけになろうが、ガロウは立ち上がった。
許せない。自分が一生懸命にやっていることを遊びだと思われたことが。


「てめぇらはヒーロー"ごっこ"じゃねぇつもりか? あ?」
「くせぇ〜。偽善くさくて吐き気がするぜ」
「お前らヒーローは糞だ」


この言葉は、クロビカリに向けてだろうか。それとも、かつての友人に向けてだろうか。
ヒーローの悪いところなんていくらでも喋ることができる。
正義はいつだってガロウを理不尽に陥れた。
いつだって助けてくれるのは自分自身。今だって、昔だって。
……いや、昔は違うか。助けられてたな。
でも、今は違う。アイツはヒーローになった。あの時言った言葉は全てまやかしだったのだ。
そのことが、ガロウの胸がざわつく。
この世は糞だ。全ての生き物が糞。
糞が糞を支持するのは手に負えない。


「だからこそ俺は戦う。この命をかけて正義を蹴散らす」


ビキッと体のどこかが鳴った。


「テメーにこの怪人ごっこは終わらせねぇぞ」


クロビカリは構えた。心の中は驚きと、焦り。
確かに致命傷の攻撃を与えたはずなのに、動いていることに。
ガロウの攻撃をクロビカリは受けている。
問題ない。筋肉ガードならどんなだけ気も防げるから。
ガロウの攻撃が止まった瞬間に一気に攻めて終わらせよう。そう思っていたのに。


「(気のせいか? 奴の動きが段々速く……)」


いつの間にか、クロビカリの脳内に敗北という文字が一瞬浮かんでしまった。
クロビカリの本気の攻撃もガロウは片手で止める。
ガロウのリミッターが、はずれようとしていた。
脳内には今までの努力と、子供の頃の記憶と、名無しさんのこと。
……そういえば、名無しさんここにいるんだっけか。
今頃どうしているだろうか。死んでいるだろうか。生きているだろうか。
まぁ、俺には関係ないことだ。
出来る事なら、名無しさんは俺の手で殺したかったものだが。


「ったく、次から次へと」


ガロウの手が止まったのは、何かが崩れていく音。


「今度は何だ。この揺れはよぉ」


ガロウはクロビカリに聞いてみる。
しかしクロビカリは黙ったままだ。そのまま倒れる。意識がない。


「なんだもう終わってたのか」


ガロウはクロビカリとの闘いを振り返る。
確かに、パワーと固さにはヒヤリとした。負けていたっておかしくない。
しかし、超えた。超えてやったのだ。
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