短編2

□ゴリラだってヒロインになれる
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青春真っ盛りな中学
まだ幼いながらも恋人がいて平日は学校でお喋り、休日はデート
周りはそんなのばっかだった
片思いな人も少なくなかった
「ねぇどうやって話しかけよう?」なんて言われても「知らんがな」の一言で片付けたいのを必死で抑えていた
そんな可愛らしい女の子が友達の中、私はお家に引きこもりゲームか映画を観ているという始末
どうして神様はこうも違う人間を作り出してしまったのか
いやでも別に恋バナが嫌いというわけでもないし話を聞いてるぶんは楽しい
意見を求められるのが困るだけだ
普通に可愛いものも好きだし、甘いものも好きだ
けど、ゲームや映画の話をするのが一番楽しいのだ
やはり自分の趣味を語れるのが嬉しい
そりゃ女の子にもゲームや映画が好きな子だっている
でもそういう女子は可愛いゲームだったり恋愛映画だったりしてしまうのだ
私は、真正面からぶっ殺すゲームだったり最低でも三人以上は死ぬ映画が好きなのだ
当然同年代の女の子と話も合うはずもなく映画を一緒に観にいく友達もいなかった
やはりこういうものは男子が好きらしい
あぁ、遠くでバイ○ハザードの話が聞こえる・・・混ざりたい・・・
なのでたまに男子とそういう話で盛り上がれるのだ
今も、隣の男子とお話真っ最中だ


「でね、アクションがすごいんだよ。サイタマ君ならわかるよね」

「わかる。敵役もいいキャラしてたよな」

「あれすごかった。普通セロハンを武器にするか!?」

「しねーな!さすがに笑った」


サイタマ君は私の良き話相手であることに気づいた
漫画、ゲーム、映画
これらすべての趣味が一致するし、チャラチャラもしてないので話しやすいのだ
授業中の暇な時間、休み時間で友達がいないときなどはサイタマ君と話していた
趣味の話だけでなく日常会話するのも楽しい
こんなに気の合ってたくさん話せる友達は初めてかもしれない


「そういえばさ、あと一週間で公開されるゾンビ映画あるじゃん」

「あー、あれか。名無しさん好きそうだと思ってた」

「さすがサイタマ君私の好みをよくわかってらっしゃる」


そう、元軍人ニートがゾンビだらけの世界となった場に愉快な仲間たちと共に巡るという話である
いかにもギャグ要素満載であるしゾンビはガンガン殺される系です好物です
サイタマ君は知っていると思っていたよ


「面白そうだよなー」

「だよね!!そして今回も一緒に映画観に行く人がいないわ」


ぼっち映画をこの前したのだが、その虚しさといったら半端じゃなかった
観ている時はいいのだが終わった後、一人で出口に向かい一人でバスに乗る
感想を言いあう人がいないのは寂しかった
だからといって臓物が大スクリーンいっぱいに飛び散る映画を可愛い友達たちにみせるわけにもいかない
結局今回もお父さんとデートで決定そうである
この虚しさを伝えようと「行く人がいない」と言ったつもりだったのに


「じゃあさ、一緒にその映画観に行かね?」

「ふぁいっ?」


一緒に行きたい、などとは遠まわしにも思っていなかった
いやこれは私の言い方が悪かった申し訳ない
しかし断るのも申し訳ないと思い、承諾した
あれこれってデートみたいなんじゃね?と思ったが気にしないようにして今日は眠った








そして約束の日
サイタマ君のことだから遅刻してくるかと思ったが、意外にも彼は私よりも早く来ていた


「はよ」

「おはよう。サイタマ君遅刻してくるかと思ってたわ」

「なんだよそれ」


二人で一緒に映画館へ入る
中は薄暗くこれから先公開する映画のポスターが綺麗に貼ってあった
映画の席は早めに来たおかげでいい席を取れたのでサイタマ君とニッと笑いあう
映画が始まる前の広告も割りと好きなのでもう入場してしまった
次々流れる映画の広告は楽しめそうなものばかりだった
途中小声でサイタマ君とひそひそ話したりもした
そして音が反響する場内
いよいよ映画が始まる合図だ


「楽しみだね」

「だな」


不穏な音楽と黒と赤のロゴに胸が高鳴った
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