短編3

□玲瓏の世界を踏みしめて 後
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世の中に必要なのは平等な正義ではない
平等な絶対悪
全人類が怪人ガロウに怯えながら、皆心を合わせて生きる為に活きる——そんな、平和な世界にしたかった
そのために、強くなりたかった
そのために、今の今まで頑張ってきた。生きてきた
自分の生きた人生全てが、たった一発の拳で壊されガロウにはもはや生きる意味がない
立ち上がる力もない。振り絞れる勇気もない
死んだっていい。いや……死ぬべきだ
ガロウ自身だって、周囲だってそれを望んでいる
体が空っぽになる感覚に身を任せた


「やめて!! やめてよ!!」


ガロウの残り少ない灯の瞳に、少年の姿が映った
小さい身体で、あんなに大きいヒーローに立ち向かっている
勝てるわけないのに
それでも必死に、戦っていた


「逃げて!!! おじさん逃げて!!!」


泣き叫ぶ声が、ガロウの生気を震え立たせる
ここで逃げてどうなる?
俺に、生きろとでも言うのか
生きる意味も活力も無いというのに、生きろ、とはとんでもない苦行だ
今ここから生き延びたって、ヒーロー協会は詮索をするだろう
生きていたって辛いだけではないか
生きていたって苦しいだけではないか
生きていたって理不尽なことだらけではないか
……それでも、


——私は、ガロー君に生きていて欲しいよ

——私は、ガローさんに生きてて欲しいですよ


"生きて欲しい"と思ってくれる人がいるのなら、生きるしかないではないか
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