短編2

□恋だっただなんて
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「初めまして。貴方のマネージャーになります、名無しさんと言います。これからよろしくお願いします」

「初めまして。キューティーフェイスと言います。新人で、何もわからない者ですがよろしくお願いします」


お互い軽い挨拶をし、握手をした
身長は私と同じぐらいで男にしては小さいだろう
身長よりも目につくのはこの可愛い顔である
年上のお姉さま方なら微笑むだけでイチコロだろう
実際私も結構危うい
なんですかこの天使は・・・!!ありがとうございます
キュティーフェイス君は私の手を離すと、頬をかいた


「へへ。嬉しいです。初めての芸能界でサポートしてくれるのがこんなに可愛いマネージャーさんだなんて」


今の言葉で血がすべて脳に廻り、倒れそうになってしまった
何だこの子は本当に天使だった
アマイさんとは真逆だ
アマイさんの美しさは宝石であるならキューティーフェイス君の可愛さは水晶だろう
アマイさんなんて見かけだけだ
こんなに可愛い子であったら私も頑張るしかない
よーし!これから今まで以上に頑張るぞ








キューティーフェイス君のマネージャーになってはや一ヶ月
さすが社長が超大型新人というだけあって、彼は大とは言わずともブレイクしている
雑誌では人気モデルナンバー10内に入っているし、テレビでも大人気番組に出演するほどだ
いずれもっと人気がでてアマイさんとライバルになれるだろう、この子は
マネージャーの私としてもとても誇らしかった


「はい。どうぞ。疲れてない?大丈夫?」

「大丈夫です!・・・名無しさんさんも大丈夫ですか?僕より寝てませんよね・・・?僕のことは大丈夫ですから名無しさんさんも休んでくださいね」


みましたかこの天使っぷり!
アマイさんとは大違いで涙がでてきそうだ
本人も頑張っているというのに、私の心配までしてくれるなんて
とても芸能界の子とは思えませんね
こういう子であったなら私はもっと頑張るというのにアマイさんは・・・
まぁ彼とは会うことはないのだから今更グチグチ言っても何もならないが
過去の思い出を頬を叩いて消し飛ばす
もうすぐ休憩が終わるので、私はスタジオの影の部分へ戻った
ここから見守るのである


「さて!今回はもう一人ゲストがいます!なーんと・・・アマイマスクさんです!どうぞ!!」

「どうも」


まさかのゲストに持っていた書類を落としてしまった
その音に驚いたスタッフさんが一斉にこちらを見る
羞恥の中、床へ散らばってしまった書類を集める


「みなさんこんにちは、アマイマスクです。今日は番組にお呼びいただきありがとうございます」


久々に聞いた甘い、身体中を振るわせるような声
たった一ヶ月。それなのに随分久しぶりに彼をみたような気がする
アマイさんは最後に出会った時の長髪ではなく、黒い短髪であった
出演者が驚いているところをみると、サプライズゲストか
おそらく知っていたのは製作者と司会者だけだろう
やってくれるなぁおい
いかにも視聴者の心をテレビ越しでも掴んでしまうような演説もどきに苦笑してしまう
すると後ろから話かけられた


「名無しさんさん!」

「あー・・・と君は・・・アマイさんのマネージャーさんだよね?」

「はいそうです!」


笑顔で喋りかけてくる
エクボがとても可愛い
長い髪の毛はポニーテールにし、栗色の髪が白い肌にマッチしている
活発可愛いとはこういうようなことを言うのか


「どう?アマイさんの世話してて大丈夫?辛くない?パシリされてない?やめたくなったらいつでも社長に言っていんだよ。精神が病む前に」

「アマイマスクさんのことズタボロに言いますね・・・」


こんな可愛い子がコキを使われているなんて許せない
そんなことがあったらアマイさんのところ殴りにかかるからいつでも相談してね


「大丈夫です!!アマイマスクさんは名無しさんさんが言うより全然優しいですよ。自分も大変だろうに、私のことまで心配してくれて・・・とても、優しい人です」


どうしよう今ものすごく壁殴りたい
おいテメェ何新人マネージャーちゃんには優しくしてんだ
でもまぁ、この子が楽しくやってくれているのなら私はいい
お互い、良かったのかもしれない
アマイさんは可愛いマネージャー
私は可愛い新人君
二人ともいい方向へ進んでいるようだ
「はーい休憩ー」という声
もうそんな時間が経っていたのか
番組は長いらしく、休憩がちょくちょく合った
キューティーフェイス君の下へいく


「はい。チョコレート。次も頑張ってね」

「ありがとうございます!」


相変わらず天使っぷりに私は卒倒寸前だ
チラリと後ろを振り返ってみる
アマイさんとマネージャーさんが談笑していた
・・・なんだあの優しい笑顔ー!?私むけられたことないんですけど!?
そうやって可愛い子には優しくしてブスにはヒドイんですね。世の中不平等
ふつふつと湧き上がる怒りを唇を噛んでやり過ごした




「お疲れ様ー」

「ありがとうございます」


現代の若者は挨拶もできんのか、と言われるようになったがこの子は例外のようだ
感謝のお礼の言葉を忘れないだなんて。どこかの誰かさんも見習ってほしい


「名無しさんさん大丈夫ですか?」

「へ?」


突然の心配に、何を言われたのか理解できずもう一度言ってもらうことになってしまった。申し訳ない
何が「大丈夫」なのだろうか


「いや、その・・・アマイマスクさんとは何かあったようでしたし。それで怒っている顔してたから・・・」

「あー・・・いや全然大丈夫!そんな大したことでもなかったから」


そんなとこまで見ていてくれたのか
君はアマイさん以上の人間になれるよ


「それにしてもアマイマスクさんも勿体無いことしましたよね。名無しさんさんのこと手放すなんて」

「はい?」

「だってアマイマスクさん休憩中ずっと僕達のこと睨んでいましたよ。きっと羨ましいんだと思います。僕と名無しさんさんが仲良くしているのが」

「アッハハハ。ないない。アマイさんは私のことを下僕としか思ってないよ」


アマイさんが嫉妬?ないない
私のことなんて言う事を忠実に守る猿としか思ってないだろう


「たぶんキューティーフェイス君のことを怖がってるんだよ。自分を超える人間かもしれないってね」


さて、次はモデルの撮影だ
急いで準備しなくては
キューティーフェイス君より一足先に現場へ行き、準備をした
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