ご趣味は何ですか?

□七発目
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時間が13時を回る。
サイタマと名無しさんのお腹が鳴ったのは同時だった。
あまりにも同じタイミングなので、思わず2人は笑ってしまった。
サイタマが立ち上がる。


「名無しさんとジェノス昼食ってけば?」

「元からそのつもり」

「それではお言葉に甘えさせていただきます」


チッ、コイツも一緒か。と呟いた言葉は名無しさんとサイタマには聞こえない。
サイタマとご飯を食べることは嬉しい。
しかし名無しさんと一緒なのが気に入らない。
しかし、しかしだ、名無しさんがいなければ自分はここで追い出されていただろう。
感謝と憎悪。どちらの気持ちも心の中にある。
チラリと、名無しさんを見てみると目が合ってしまった。


「そんなにこっち見つめるなって。照れちゃう」


何で、どうしてこんな奴が。殴りたい衝動を抑えるので精一杯だ。
ハッもしかして。と考える。
サイタマ先生が優しいから付き合ってあげているだけなのでは……?
ならいつかコイツを排除しないと、サイタマ先生が可哀想だ。
うんうん、と結論をつけることができたようだ。
そこで、いい匂いが鼻を通った。


「さっそく名無しさんの餃子を食わしてもらうぜ」

「うん、いいよー! いただきます」


先ほど、名無しさんが渡していた餃子だ。
焼き加減もばっちりで、美味しそうなコゲが白いお皿を映えさせている。
ジェノスは箸を持ったまま動けなかった。
名無しさんが作った物など口に入れたくないからだ。
しかし、せっかく焼いてくれたサイタマの手間を蔑ろにするわけにはいかない。
どうする、どうする。と考えているとサイタマが声をかけた。


「ん、ウメェ。相変わらず料理上手いな。性格と性格と性格を除いたら毎日食いたいレベル」

「やだ、結婚しちゃう?」

「ジェノスは食わねーの?」


名無しさんを無視し、ジェノスへ問いかけた。
そう言われたのなら、食べるしかない。
おそるおそる、餃子を口へと運んだ。
溢れる肉汁と、生姜のさっぱり感。野菜もシャキシャキと食感が失われていない。
確かに、これは、美味しい。


「どうだ、美味いだろ」

「はい先生。ただコイツが作ったということを除けば」

「そろそろデレていいんだよ? でもありがとう」


そう言って嬉しそうに笑った。
気に入らない奴。そのはずなのに、餃子を食べる手が止まらない。
ニンニクを入れていないらしい。だからサッパリ食べられるのだと。
その気遣いが、昔の母を思い出した。
母も、自分が小さい頃は食事に刺激物を抜いていてくれた。
自分だけのご飯を、わざわざ作ってくれていたのだ。
美味しい、と言って笑うその笑顔は悪くない。
そう思うジェノスであった。
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