ご趣味は何ですか?

□七発目
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「つーことだ」

「しかし先生! コイツは怪人ですよ!!」


サイタマとジェノスが言い合っている。
そんな2人を名無しさんはただ口を開けてみていた。
ジェノスは怒号にも近い声でサイタマに様々な質問をぶつけていた。
サイタマは耳をかきながら、淡々と答えていく。
しかしジェノスはその返答は全て納得のいくものではない。
そろそろサイタマが面倒になってきた頃、質問の嵐を止めたのは名無しさんだった。


「サイタマァァァァァァァ!!」


名無しさんがサイタマへタックルした。
ジェノスが驚く。あのサイタマが見たことのない、余裕のない顔をしているから。
サイタマの足元は地面が抉れ、砂煙が舞っていた。
名無しさんは仮面を外して、サイタマを見上げた。
まてしても驚いたのはジェノスだ。怪人と名乗る女が、どっからどう見ても人間であったから。


「何かの先生でも始めたの!? 同じニート仲間だと思ってたのに!! スキンヘッドで先生できる風貌じゃないくせに!!」

「ちげーよ。てか失礼なこと言ってんじゃねぇ!!ジェノス、こいつのこと焼却していいぞ」

「えっあ、はい!!」


ジェノスが構えた。
しかし名無しさんはニヤリと笑う。


「またお裾分けあるんだけどなー」


サイタマが目を真面目にする。
たまにしか見せないキリッと顔だ。
腕をジェノス前に出す。停止のマークのように。


「やっぱやめるんだジェノス」

「え!? しかし……」

「じゃ、後でサイタマんち行くね」


そう言うと名無しさんは仮面を戻し、怪人を抱えたままどこかへ行ってしまった。
ジェノスはサイタマの顔を見る。その顔は先ほどと同様納得のいっていない顔だった。


「逃がしていいのですか!?」

「いいんだよ、アイツは」


サイタマはそう言うので仕方ない。仕方ないのだが、納得はできない。
怪人を助けるなど、悪を助ける行為など、許されるものではない!
しかし、正直言えばあのまま戦っていて勝てる可能性は0だった。
サイタマが現れなかったらどうなっていたか、自分でも想像できない。
ここは大人しくサイタマの言うことに従うしかなかった。




「やほーい。来たよ」

「おう。一人客がいるけど入れ」

「じゃましまーす」

暢気にサイタマの家に上がる名無しさんの動きが止まる。
ジェノスはジェノスで先ほど聞いた声に反応した。
お互いの視線が交わった時に、ジェノスはサイタマの方へ向いた。


「先生! 何故怪人なんかと仲良く!?」

「え、なんで君がサイタマんちに?」

「(両方に説明すんのめんどくせぇ)」


サイタマは逃げるようにお茶を入れ始めた。
その間2人っきりになったジェノスと名無しさんは沈黙だ。
あの名無しさんが静かなことに驚く。アイツ意外と人見知りなのか?
お茶を3人分テーブルに置く。
沈黙にきっかけを作ってくれたのはサイタマだ。
サイタマはジェノスのこと、名無しさんのことを話し始める。
名無しさんは会話の途中で少し質問するだけ。いつものように話を聞かない態度ではない。


「サイタマの強さに惚れてねぇ……やったね、年下の彼氏とかやるじゃんサイタマ!!」

「殴るぞ?」


ジェノスは正座の上に乗せている拳が震えてしまう。
先ほどから我が師に対して無礼なことを言っている名無しさんに怒りがこみ上げる。
しかし、サイタマが招き入れた客だ。あとここはサイタマの家だ。
暴れることはできない。


「ま、強くなるために頑張ろうジェノスくん」

「気安く触れるな」


名無しさんがジェノスの肩に手を置いた。
その手をジェノスは拒絶する。


「なんだ、真面目で硬派でツンデレとか萌えだな。いつかデレろよ」


目から煙が出そうだ。
それは名無しさんの言っている言葉の意味が理解不能なのと、馴れ馴れしい態度がムカつくからだ。
我慢だ、我慢をしろ。そう言い聞かせる。


「やれやれ……私ったらかわいいから会う人会う人をツンデレにさせちまうぜ。あぁ、罪な女」

「焼却」


名無しさんへと手のひらを向ける。またそこが光始める。


「家でやったら怒るぞ」

「クッ……!」

「怒られちゃったね、ドンマイ」


いつか、いつか絶対殺す……!
ジェノスの決意が増えた日であった。
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