手鞠唄

□ニワトコの庭
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養父から祓魔塾に通うよう言われていたのだ。目的は、奥村兄弟の監視。日本支部長直々に与えられた任務だった。
意外な時間だったことに慌てながら、周りにドアが無かったので近くの家の玄関を拝借して鍵をさす。相変わらず埃っぽい廊下を疾走して、チャイムと同時に教室に滑り込んだ。このタイミングなら個人的にはセ-フ。けれどもうみんな着席していたせいか、注目を浴びてしまう。みんな知らないのかな?チャイムと同時ならセ-フなんだよ?でもまぁ、そんな事言える訳は無く、
利:「・・・すみません、遅れました。」
同じタイミングで違うドアから入室した講師に謝罪する。
雪:「・・・取り敢えず、着席してください。」
講師が知り合いで良かった。そして冷静で良かった。大人しく返事をして適当な席に座る。途中で、小声だけど「なんやあいつ!」とか聞こえたのは聞かなかった事にする。
今年度も少ないなと思いつつ教室内を見ると、
前方に犬化した養父を発見。
利:ということはあの子が奥村燐・・・
養父は昨日、こうも言っていた。
メ:「明日から、例のサタンの落胤も祓魔塾に入塾するんです。―明日は私も彼に付き添いますが、黙っていてくださいね?」と。
白い犬(私は可愛いとは思えない)にまとわり付かれる少年に同情を覚えた。青い炎なんて、好きで継いだ訳じゃないだろう。たまたま継いでしまったものに、振り回されている。
利:普通に暮らしたいだろうに。
そしてそれはきっと、目の前で講義をしている同僚も一緒で。
ところでお兄さんの燐君は弟が祓魔師だとは知らなかったらしい。思いっきり吹いたあと、魔障の儀式の準備をする雪男に詰め寄っていく。嫌な予感しかしないが、見守るしかない。
燐:「説明しろ・・・!」
雪:「・・・授業中ですよ 席について」
燐:「ふざけんな!」
あくまで講師役に徹する弟に我慢出来なくなった燐君の声が響く。雪男がなにか小声で言う。何を言ったのか聞き取れなかったが、燐君が息を飲んだのは分かった
雪:「・・・そこどいてくれる?」
燐:「・・・・・・・・・・・・・・・じゃあ・・・なんで俺に言わねーんだ!!!!」
再び声を上げた燐君は怒鳴るついでに雪男の腕を強く掴む。雪男の手の中には鬼を呼ぶ為の血液。腐敗臭を覚悟し顔を背けた。
雪:「!」

  ガチャン!!!!
試験管から血と悪臭が流れ、それに釣られた小鬼が天井から溢れ落ちてくる。小鬼もそうだが、この悪臭の方が危険だろう。
出:「悪魔!」
勝:「え どこ?!」
出:「そこ!!」
大騒ぎだ。というより、よく息を吸える。きっと彼らは伝説の勇者だ。
燐:「あ・・・」
雪:「小鬼だ・・・!」
生徒に襲いかかる小鬼を雪男が撃ち抜く。
出:「きゃあッ」
小鬼:「グルッグルル・・」
雪:「教室の外に避難して!ザコだが数が多い上に、完全に凶暴化させてしまいました・・・すみません僕のミスです。まだ新任なもので・・・。申し訳ありませんが・・・僕が駆除し終えるまで外で待機していてください。」
手伝った方が良いだろうか。どうしましょう、と養父(犬)を見れば、行け、とばかりに顎でドアを示される。周りにバレないよう軽く頷きつつも、可愛くない犬に顎で使われて良い気はしない。出るときに慌てた振りをして足を踏むと、「キャン!」と鳴いた。自然とガッツポーズが出たのは秘密だ。
雪:「奥村君も早く・・・・・・」
雪男が燐君を促す。待機中に挨拶くらい済ませておこうかな、と思って振り向くと
 バン!
何故か勢いよくドアが閉まった。
朴:「きゃっ」
利:「!!」
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