手鞠唄

□ニワトコの庭
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 どこだ。ここはどこだ。学校を出てもう二十分は歩っていた。おかしい、おかし過ぎる。仕方が無いので、一旦道の端に寄って昨日養父が何をどう言っていたか思い出してみる。確かこんなやり取りがあった筈だ。
―メ:「利央さん、実は今年度入学生を増やしたら女子寮が埋まってしまいまして・・・。それで申し訳無いのですが、他の生徒さんと一緒に旧男子寮に住んで頂きたいんですよ。」
いかにも怪しい依頼に、私は質問を返す。
利:「寮が足らないというのは、一人分ですか?珍しいですね。」
メ:「ああ、いえ、利央さんだけではなく、通える範囲の方にはなるべく通学にして頂けるようお願いして、やっと後一つにまでしたんですよ。それにこれ以上、人様からお預かりしたお嬢様方に負担を掛ける事は出来ません。動かせるとしたら身内の貴方しかいないんです。・・・ご協力頂けませんか?」
何だ、そんなまともな事ならさっさと言ってくれれば良いものを。
利:「勿論良いですよ。旧男子寮ですね。」
メ:「はい。ご協力感謝します✩学校の正門から真っ直ぐ歩けばつきますよ。」
利:「分かりました。」―
こんな感じだった筈だ。今更ながら色々とツッコんでおくべき点があった気がする。例えば、何故男子寮なのかとか、女子で動かせるのは私だけだと言っていたのに一緒に住む生徒がいるとはどういう事かとか。考えればおかしいのだ。もうむしろ全ておかしい。
利:「抜かったなぁ〜・・・・」
と呟けば、「え?何の事?お嬢ちゃん?」と誰かが返してくれ・・・って
利:「はい?」
「あ、いや、一人で喋ってるから、どうしたのかなって思ってさ。」
利:「えっとぉ-・・・」
犬の散歩中だった親切そうなおじいちゃんに聞こえていたらしい。恥ずかしい、これはひどい。犬の方も尻尾を振りながら無垢な目で見つめ詰めてくる。そんな目で俺をみるなああああああ!と内心大絶叫して頭を下げた。
利:「すいませんなんでもありませんっ!」
「?そうかい。じゃあまた。」
にこやかに去っていくおじいちゃんと犬。人生の危機が去ったことに胸をなでおろす。疑問符は気のせいにする。

そして、引き続き迷子だ。さっきついでに道を聞けば良かったと思いつつケータイで時間を確認すると、
利:「えぇっ、塾いかなきゃ!」
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