other
□“おめでとう”
1ページ/2ページ
「はぁ〜ぁ……」
最近與儀のやつ、毎日ため息ばっかついてやがる。
仮にも恋人である、俺の前でもずっとため息ばっか。
そんなにつまらないならここに来なければいいじゃねぇか。
しかも、ため息つく度にチラチラとこっちを見てくるし……言いたいことがあるならはっきり言えよ。
だから俺は、コイツが話しかけてくるまで無視していようと思う。
「……はぁ〜……」
だか、こんな感じのがもう2週間ぐらい続いていたので、さすがに腹が立ってくる。ガキか、コイツは。
「………………」
「……はぁ〜……」
「……………………」
「…っ……はぁ〜ぁ……」
「…………………………」
「っっ…はぁ〜っ……」
「………………………………」
「……〜っもう!ちよっとは構ってよぉ!!」
いや、むしろ構ってくれなかったのそっちじゃねぇのかよ、とは言わないでおく。
「……なんだよ。」
「いや……ちょっと、ね。」
なんでコイツはさっさと言わねぇんだよ。うぜぇ。
無視してようかな。聞くのもめんどくさくなってきた。
よし、部屋に戻ろう
「わあああっ!!待って待って!!!」
「…なんだよ。」
「あのね、花礫くん、誕生日……だったでしょ?……でも、いろいろ忙しくて、祝えなかったから…ごめんね?」
コイツ、そんなこと気にしてたのか。
別に気にしてねぇのに。
「……與儀」
「な、なに?」
普段は絶対自分からしないけど、今日は特別。俺から抱きついてやった。
「が、がが花礫くん?!ど、うしたの?」
「……俺は、お前が忙しいこと知ってる。だから、別に気にしてない。……そりゃあ、少し残念だったけど…でも、大丈夫。ちゃんと、わかってる……」
「…花礫くん」
恥ずかしいことを言ってしまった気がする。
與儀の顔が見れない。
胸に顔を埋める。
そうしたら、與儀が強く抱きしめてきた。
「…ありがとう。今更になるけど……
お誕生日おめでとう、花礫くん。」
そう言って、髪の毛にキスをされた。
「……ん。」
俺も強く抱きしめ返した。
誕生日はもう終わってしまったけど、
こんな“おめでとう”もいいかもしれない。
→あとがき