【柳原学園】

□第二章
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「おい和樹。もう用件、コイツらに話したよな」
「え、あ、うん」
「カズっちは、悠ちゃんと僕らの絡みが見たかったから来たんだよね〜」
「話してねーじゃねぇかッ!!」
「ぐはっ!」


うわっ…痛そ〜…。
御子柴は直ぐ手が出ちゃうんだよ。
感謝もしてるけど、やっぱり恐いです。
俺は体術はそれなりに出来るけど、やっぱり喧嘩慣れしてる御子柴には勝てないだろうしね。
幸い、今の所暴力的なことはされてないから良いんだけど、ギリギリのとこを見極めて演技しなきゃ。


「もしかして、リュウっちも見に来たの〜?」
「…御子柴委員長にもソッチの趣味があったなんて、知りませんでしたよ」
「俊太、趣味は人それぞれなんですからそんな冷めた目で見ては失礼ですよ」
「……智也の言う通りだ」
「違う!! こんな腐りきったヤツと一緒にすんな!!」
「りゅ、竜二……」


殴られた腹を押さえながら、綾部はヨロヨロと立ち上がる。
そんな、腐りきったヤツなんて……ヒドいこと言っちゃ駄目だろ。
ソッチの趣味とか腐るとかよく分からないけど、流石の綾部も傷付くんじゃ…。


「腐ってて何が悪いのさ!!」


…あれ。
否定や非難どころか、何か開き直ってる?
腐るってどういう意味なんだろ。
人間あそこまで腐ったら終ぇだな、的な見下し台詞じゃないのかな。
よく分からん。


「ってゆーか、俺ちゃんと言ったってばー。『鬼ごっこ』一択でしょ、って」
「は? 鬼ごっこ?」
「…あぁ、もしかして綾部は新歓の話しに来たのか?」


新歓の話してる時に綾部来たもんな。
綾部はさっきのダメージはもう無くなったのか、ニコリと笑う。


「そうだよー。流石ユーリ会長」
「新歓に鬼ごっこ、ですか? 随分幼稚なこと言うんですね、綾部副委員長は」
「鼻で笑わなーい。庶務クンは分かってないなぁ。新入生歓迎会だよ? 鬼ごっこだったら、学年関係なく交流出来るじゃん。足の速さなんて、高校生にもなれば歳でそう変わらないだろーしさぁ」
「成る程……でも、体育会系のヤツならまだしも、大人しめ系坊ちゃんも新入生にはいんだぞ? そいつらが進んで走りたがるとは思えねーけどな」
「ユーリ会長、良い視点!! そこで御褒美の出番でーす」
「わぁ〜、何なに〜?」


何かテレビショッピングみたいなノリになってきた…。
何気に綾部と啓介ってノリが似てんだよな。
チャラ男と可愛い系なのに。
綾部は得意気な顔をして、グルッと俺たちを──生徒会メンバーを指差した。


「多く捕まえた鬼と、最後まで残れた生徒は、生徒会メンバーにお願いを聞いてもらう権利が授与されまーす」
「……はぁ!?」
「私たちに、願いを?」
「ふ〜ん、成る程ね〜」
「……確かにそれなら…」
「殆どの生徒が死に物狂いで参加するでしょーね」


智也は少し首を傾げ、啓介は棒キャンディを口に入れて。
桃矢は顎に手を当て、俊太は面倒くさそうな表情でそう言った。
ちょっと待て。
いやまぁ確かに、人気者の集まりの生徒会に願いを聞いてもらえるんなら、日頃影で見るしかないヤツらは、そりゃあもうとんでもない勢いで参加すると思うよ。
でもコッチのデメリットが多すぎるんじゃないの、これ。


「そりゃ良いな。俺が権利取った暁には、生徒会を風紀の配下に入れてやるぜ」


ニヤニヤと笑う御子柴。
ほら、こんなヤツもいるじゃん!!


「それは駄目だって、竜二。常識の範囲内でのお願いじゃないと。生徒会なくなったら、柳原学園自体が成り立たなくなっちゃうじゃん。そーだなぁ…その場で直ぐ出来て直ぐ終わるやつ限定かな。抱きしめてほしい、とかさぁ」
「チッ、つまんねぇな」


盛大に舌打ちする御子柴。
取り敢えず、どんな願いでも生徒会長の地位を剥奪されることはないみたいだ。
ふむ、それなら色々考えなきゃならないだろうけど、鬼ごっこも悪くないかな。


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