【柳原学園】

□第二章
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(no side)



呆然と悠里が荒く閉めた仮眠室の扉を見つめる生徒会メンバーと風紀メンバー。
プルプルと震え始めた綾部は、グッと拳を握って。


「ッキタァァァアアア!!」
「…ッうっせぇ!」
「いやいや、ちょいと待って下さいよ、竜二! あれ、あれ見た!? 俺は見た!! あの赤面!! 言いかけた『おと…っ』って、あれだよな、『男』だよな!! 彼女じゃなくまさかの彼氏!! ってことは何? ユーリ会長が彼女? ユーリ会長がネコ!? 新☆展☆開! いやー、新たな世界見つけちゃった感じじゃね? どうよどうよ?」
「うるさい。ちょっと黙って」
「うーい…って、えぇ!? い、今会計クンが喋った? 違うよね、何かいつものぽやぽやしてる感じじゃないもんね?」
「副委員長、黙って下さい」
「喧しいんですよ、綾部副委員長。これ以上騒いだらホッチキスで口閉じます」
「うえぇ!? 想像するだけでイタい!!」
「……今それどころじゃないんだ。分かってくれ、綾部」


桃矢までもが綾部に対して言外に黙れと告げる。
ここまでくると流石の綾部も空気に気付く。


「…何か君たち、オーラ黒くなーい?」
「気のせいですよ、副委員長。もうお戻りになられてはいかがです?」
「……風紀は風紀で大変なんだろう」
「俺らもまだやることあるんで」
「いや、俺としてはユーリ会長にもっとkwsk訊きた…」
「カズっち」


悠里に言われた通り業者に電話しようと携帯を取り出した啓介は、静かに綾部に視線を移す。


「──帰れって、言ってんの」


いつもの柔らかな雰囲気も甘い笑みも無い啓介の言葉に背筋が震えるのを感じた綾部は、ガシッと御子柴の腕を掴んだ。


「りゅ、竜二、皆忙しいみたいだから風紀室戻ろっか!!」
「…っ引っ張んじゃねぇ!」


いつもよりも、ぼーっとしている御子柴を引き連れて綾部は生徒会室から出て行った。
しん…となった生徒会室にあるのは啓介の電話の声と黙々と作業を始める生徒会メンバー。
啓介は業者との話が終わって、プチリと通話を切る。



((((『レイ』ね…))))



悠里の口から出たその名を同時に心に刻んだことは、各々知る由もないことだった。



こうして勘違いがなされたまま、新歓を迎える───…。



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