【柳原学園】

□第二章
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☆☆


「──…腕に緑の腕章付けた鬼が逃げる奴に接触した時点で捕まえたこととする。捕まえられた奴は手首の赤いバンドを鬼に渡せ。制限時間は二時間。早々に捕まった奴には、鬼の中で誰が一番赤バンドを奪取するかを予想してもらい、当たった奴ら皆に食券が与えられる。そして、鬼で赤バンドを多く奪取した上位三名と最後まで逃げ残った奴には、生徒会役員に何か一つ願いを叶えてもらう権利が与えられる。出来る限り叶えてやるから、お前ら気張れよ。つーことで、新入生歓迎会鬼ごっこ開始!!」


ピィィィイイ!! という甲高い音が柳原学園に鳴り響き、ワッと生徒たちの声が湧いた。
鬼は三分後にスタートする。
俺は舞台から降りると智也が下で待っていた。


「お疲れ様です、悠里」
「言うには早ぇだろ。本部はしっかりやれよ」
「ほんとに悠ちゃん走るの〜? 会長なんだから僕らと本部で待ってれば良いのに〜」
「俺が走れば馬鹿共の牽制になるかもしれねぇだろ」
「……俺が、代わろうか」
「…お前ら俺を嘗めてねぇか」


次々に走らない方が良いんじゃない? と言われた俺は、じろりと桃矢達を睨む。
何だよ何だよ。
俺別に足遅くないし、寮では地味にトレーニングしてんだぞ。
…あ、誰にも言ってないや。
ってことは、授業免除されて身体鈍ってるとか思われてんのか。
俺様生徒会長は努力を見せないからな。


「松村会長、分かってますか? アンタの人気、自覚してます?」
「当たり前だろ。逃げる時間が無くなるからもう行くぞ。何かあったら電話しろ」


呆れたように肩を竦める俊太を目の端に入れて、俺は鬼から逃げるべく走り出す。
生徒会では俺だけ参加することになった。
智也たちは優秀だから、本部は任せておけば大丈夫。
風紀は今回監視役になったらしい。
鬼は風紀が厳選したらしいけど、何が起こるか分からないからだって。
鬼ごっこは特に。
綾部も積極的に見回りをするつもりらしい。
『カワイ子ちゃんがアーッ♂されてるのを見逃せな…じゃなくて、柳原学園の風紀は俺らが守らなきゃだからね!!』って言ってた。
前半何言ってんのか分からないけど、風紀を守るためだなんてそれでこそ風紀副委員長だよな。

禁止区域は教室内と部室棟と理事長棟と寮。
もう直ぐ三分経つ。
俺はとりあえず、本部から遠ざかることを目標に足を走らせていた。
まぁ、風紀が厳選したなら危ない不良とかいないだろうし、体育系の部活してる奴にだけ気を付けておけば大丈夫だろ。
そんなことを考えながら、鬼がスタートする甲高い音が遠くから耳に入ってきた。
緑の腕章をしたガタイの良い奴を見たら直ぐにダッシュだ。


──それが甘い考えだったと、俺は直ぐに知ることになる。



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