【番外編】

□【霞桜学園】会計大塚尚輝の誤解
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(4/27執筆)

【霞桜学園】会計攻略(第一章26頁)後
間宮VS大塚、大塚の誤解を知った二人


***



「間宮、大塚、コーヒー淹れようか?」
「あぁ、ありが…」
「おれ、手伝う」
「お前は仕事してろっつの」
「……」


「あのマリモ…また盛大に汚してくれやがって」
「いつも悪ぃな、神山」
「別に。お前のせいじゃねぇんだから気にするな」
「…神や…」
「食器、綺麗」
「洗ってくれたのか? 助かった」
「くっ…」


「あー、眠ぃ…」
「また無理矢理寝かせてやろうか」
「お前が添い寝してくれるなら安眠出来そ…」
「かみや、ま、裏庭」
「!! 小動ぶ…いや、待て、俺には間宮を寝かし付ける(物理)仕事が」
「…おいテメェら、何こそこそ話してんだ」
「ない、しょ」
「この野郎…ッ」


「かみ…」
「昨日、羽川」
「親衛隊と喋ったのか? 進歩したな」
「神山、の、おかげ」
「大塚の努力だろ、俺のおかげじゃねぇ」
「ッ、てっめぇ!! 尚輝!! 何なんだよお前は!!」


ある日の昼、突然生徒会室に怒号が響く。
それは日頃声を荒げることのない間宮のもので、神山はぱちくりと目を瞬かせた。
間宮に睨まれている大塚は何を考えているのか分からない無表情で、間宮を真っ直ぐに見返している。


「何なんだよお前って、お前が何なんだよ間宮、突然」
「こいつ、事あるごとに俺と神山の会話ぶった切ってやがんだよ」
「…そうだったか?」
「気の、せい」
「気のせいなわけあるか」


間宮の眉間の皺がとんでもないことになっている。
こんな苛立たしげな間宮は初めて見た、マリモにでさえこんな表情したことないのに。
神山は間宮と大塚の顔を交互に見る。


「尚輝、お前まさか神山が好きなのか」
「好き、当たり前」
「それはどういう意味で」
「どういう、意味?」
「神山を抱きたいとかか。そうなら俺はお前が相手でも容赦しねぇぞ」


抱きたいとか何の話をしてんだ殴るぞ、と言い掛けた神山だったが大塚に手を握られて言葉が出なかった。


「神山、俺の、恩人、友達、大切」
「なら俺の邪魔すんな」
「かいちょ、う、駄目」
「ぁあ?」
「会長、神山に、酷いこと、した」


その言葉に、間宮と神山は目を丸くした。
そして顔を見合わせる。
大塚の言う酷いこと、とは何なのだろうか。
生徒会室の掃除はもはや自分の意思でやっていると言っても過言ではない。
コーヒーを淹れたり世話をするのもその流れだし、そもそもそれは大塚にもやっている。
ならばと思い付くのは一番最初、間宮と神山の出会い。
間宮が保健室の裏に咲いていた花壇の花に笑いかけた神山の写真を拡散すると脅したこと。
しかしそれは誰にもお互い言っていない。
にも関わらず知っているとなると、どこからか漏れたのか。


「あー…大塚、お前が気にすることじゃねぇ」
「…でも」
「確かに最初は何言ってんだこのクソ会長マジ死ねくらいは思ってたけどな」
「そんなこと思ってたのかお前…」
「でも今のところ理不尽なことされてねぇし、もう慣れた」
「!! 慣れ、た…?」


間宮に命令されたのは生徒会室を綺麗にしろってことと、食堂に一緒に行って井川を見てみろってことだけだ。
あとは神山の生来のお節介と鷹宮中学の元生徒会長としての性。
だから大塚が神山を間宮から護ろうとする必要などない。
そう言外に言ったつもりだったのだが、予想外にも大塚は目を見開きキッと間宮を睨み付けたる。
背丈の大きさも相まって中々の迫力だが如何せん相手は間宮だ、全く堪えていない。


「かいちょ、今も…!?」
「…? まぁ最近は神山が自主的に…」
「自主的…!?」
「自主的じゃねぇ、勘違いすんな」
「はいはい、分かった分かった」
「くっ…物理的に眠らせんぞクソ会長…っ」
「かみや、ま…っ!!」


がしっ、と腕を掴まれる。
何だと顔を大塚に向ければとんでもなく強張った表情。
あれ、何でこんな深刻な表情になってんだ? と間宮と神山は首を傾げる。


「神山、かいちょ、傍、駄目、逃げる…!!」
「え、おい、ちょ、待て大塚!! 何焦ってんだよ」
「だ、って、かいちょ、神山に、…っ」
「…なぁ、尚輝。お前もしかして何か勘違いしてねぇか?」
「かん、ちがい…?」


神山をどこかへと連れ出そうとしていた大塚は、間宮の言葉に足を止める。
どうでも良いから俺を巻き込むなと内心考えていた神山。
しかし間宮の台詞にそんな考えは吹っ飛んだ。


「尚輝の反応からして、俺が無理矢理神山を犯した、くらい思ってんじゃねぇのか」
「おか…っ!?」


目を大きく見開いてバッと見た大塚の表情はポカンとしたもの。
それは『え、何言ってるの会長』ではなく。
『え、そうじゃないの?』という顔だった。
ということは大塚は今までそんな関係で二人は一緒に居て。
しかもそういう行為を慣れたと言わせる程にヤりまくっていると思われていたわけだ。
しかも最近では神山が自主的に。
事の全貌が明らかになり、神山は怒りか羞恥かで顔を赤くした。


「ッ、あ、ほ、か、テメェはッ!! 俺が!! 間宮に!! 犯された!? ふざけんのも大概にしろ!!」
「でも、神山、『あんなこと』された、言った」
「言ったけどそんなことじゃねぇ! 大体、俺が間宮なんざに組み敷かれる程弱くねぇこと分かるだろうが」
「俺も男だぞ? 押し倒す方法ならいくらでもある」
「テメェは黙ってろクソ間宮」


そもそもな、と神山は呆れたように息を吐いた。


「間宮が俺を犯すわけないだろ」


カターン……と。
間宮の手から万年筆が零れ落ち、大塚は信じられないと間宮と神山を交互に見る。
あんなに好意をぶつけられておきながら。
間宮に迫られるということが一切頭にない、とは。
神山が霞桜学園には高等部からの途中入学だからそういうのに慣れていない、と言い捨てるには鈍すぎではないだろうか。
あのいつもの偉そうな生徒会長の姿はなく、頭を抱える間宮に大塚は眉を下げる。
あぁ、会長って可哀想なんだ。


「…かいちょ、ごめん」
「同情するならもう邪魔すんな…」
「うん…」


弱々しくそう返してきた間宮に大塚は頷いた。
これからは会長を応援しよう。
勿論神山が嫌がらない程度に。
そう生徒会会計、大塚尚輝は決意した。




***

あとがきへのコメを頂いたので書きました。
もう全体的に間宮が可哀想です。
これで大塚は間宮がただの俺様じゃないんだと親近感を抱きます。
ちなみに。
『間宮が俺を犯すわけないだろ』っていう台詞、解釈の仕様はいくらでもありますよね。
例えば。

『間宮は嫌がる俺を無理矢理ヤるような下衆な野郎じゃない、馬鹿にすんな』

…とか。
まぁ、どんなつもりで言ったのか神山のみぞ知る、ですがね(ゲス顔)
 

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