雲外蒼天

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抽選会が終わり、初戦の相手も決まった。
練習時間が5時集合に変わり、まだ空が暗い中みんな集まり始めた。




『ちーす!
お、浜田来るの早いなー』




「お、おぅ…瑛も来るの早いんだな」




『俺はどっちかいうと、遅いほうだよ
家が隣の悠はもう来てるし』




「あはは…アイツ練習着の格好で来たぞ」




『やっぱりか、』







浜田と話をしていたら、ひょこっと悠が出てきた。





「あき!!おーすっ!!
なぁ、知ってたかー浜田って留年してるんだぜー」





「お前、普通に言うんじゃねェーよ…」





悠を抑える梓。




だけど







『知ってるよ?
浜田が俺らより1個上なの』




「えェー!!!
なんであきが知ってんだよ!!

…驚かせようと思ったのによー」






『孝介と勉強した時に教えてもらったんだよ』





「…へェー」




時間だよ!集合しよ!





シガポの掛け声でみんな集合した。
選手と一緒に浜田も参加した。





浜田もいる為、復習から始まった。





「…つまり君らは5分掛ければ意識的にリラックスできるんだ!」




シガポがそう言ったところで、今まで静かに聞いていた
栄口がはい、と手を上げて発言する。



「今のハナシ聞いてて思ったんですけどー」




「なにかな?」



「フリースローもそうですけど、野球の試合中、
緊張で手足が動かないからっつって5分のタイムはとれないですよね?」






「いいところに気が付いたね!そう!
意識的にリラックスできるといっても、5分もかかってちゃあ実用的じゃない!

"リラックスは、反射でできなきゃイミがない"んだ



そこからリラックスを反射でできるようになる術として
"ピンチの状況"と"リラックス"を条件づけてはどうかという梓の意見を皮切りに、

シガポのこの講習会のような頭をフルに使わなければ
とてもついてはいけない話しにもすっかり慣れて来たみんなが、
たどたどしいながらも意見を交わし合う。




途中




「わかんないよー…」


初めての浜田にはちんぷんかんぷんだったみたいで
頭をフラフラと揺らしていた。




それに気付いた孝介は、浜田に声を掛けた。





「あとで解説してやっから」





「あんがとよ…」



さすが、先輩後輩だな
孝介って面倒見いいもんなぁーー





シガポの話はまだ続く。
そして、発展していき、リラックスを具体的な何かと結びつけることで
それを見た、もしくは聞いたり触れたりした時に反射的にリラックスを引き出す
…その為の"具体的な何か"を考えようということになった。





リラックスしなければならない場面に必ずあるもの…







「ええーと……野球場?」





「広すぎるね
いろんな球場もあるし」




「緊張する場面を塗り替えるんだったな
ピンチに必ずあるもの…ってなんだ?」





「……あのさ、緊張すんのってピンチ?
チャンスの方がヤバイのって俺だけか?」




「あー、俺もそっちだあ…
ランナーがスコアリングポジション行くとすげえドキドキする!」



「いやそりゃピンチも同じでしょ!
やっぱランナーがスコアリングポジションに――……」







「「「「あ!!!!」」」」









みんな気づいたのだ。
チャンスもピンチも、同じことだということが。






「じゃ、ドキドキすんのはとにかくランナーが
二塁以降に行った時ってことか?」





「二塁じゃそうでもないな…
やっぱ手足が縮こまるのはランナー三塁だよ!!」





「「「うんうんうん」」」




勇人、文貴、一利の3人がブルブルと震えた。
確かに嫌だけど…むしろワクワクしねェのか?






「よーし、いいかな!
じゃあ、いっちょ"ランナー三塁"でやってみようか!」





「「「「「はいっ!!」」」」」







三塁の方を見れば、いつのまにかモモカンが立っていた。






今回はチャンスを想定して、瞑想を始めることになった。





『浜田、手ェかして』




「え?」




「手を繋いで瞑想すんのが日課なんだよ」




「あぁー…なるほど、よろしく…/」






ブルブルと震えている手を差し出された。
浜田の顔が赤いことや、それを見て孝介がムスっとしていることに
疑問を残しつつも瞑想のために目を閉じた。






「えっと…」


『目を瞑って、シガポの言葉通りにやるだけだよ
他のことは気にしなくていいから、俺の手にでも集中しとけ』




「お、おう…//
(な、なんだよ…俺の手に集中しろってかっこよすぎだろ!!!)」





初めての浜田は当然だが戸惑っていた。
だが手がさほど冷たくないのは、もとから体温が高いからだろう。

空気からして、他のやつらは落ち着いていくのがわかるが、浜田はまだ強ばっていた。


鳥の声がする中、志賀がパン!と手を鳴らし終了の合図を出した。


ストレッチに入るやつらに対して、浜田は疲れたように息を吐いていた。
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