雲外蒼天

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グラウンドに戻れば、三橋が泣いていた。





どうしたんだ?



『只今、戻りましたー』




「おかえり、瑛君」



『三橋のやつ、どうしたんだ?
あと、西広!』




「ありがとう、瑛!
実は、投手をもう一人作ろうってなっていてさ…

マウンド譲りたくないって…泣いちゃったんだ」







そっか、
これから練習試合も増えていくから投手が三橋だけじゃ無理だもんな







俺は、三橋のそばに行き頭を撫でながら言った。



『三橋、投手をもう一人作っても
うちのエースはお前だから安心しろよ』




「…え、?」



意味が伝わらなくて、三橋の頭には?がついている




「しのーか!!なんか書くもん貸して?」



「はいよ!」






悠は千代に太めのペンを借り、
三橋の背中に大きく



と書いた…。




「"1番"はお前のだからよ!いつもしょっとけ!」





『"1番"は、エースの証拠だろ?』





悠の言葉にくる、くるりと見渡す三橋はうれしそうに練習着を眺める。
それでいいのかと周囲は愕然としている。
なんて単純なんだ……。






「…っと、これで三橋くんに関しては大丈夫だね。


さ!夏大まであと2ヶ月ってことで、
ここは投げたことある人に絞るよ!!



プロフィールで投手経験有りにチェック入れている人は…花井君!」





「えっ。はい…」



「登板経験は?」





「ええとー…のべ、3試合分くらいスカね?
でも、ブルペンにもほとんど入ったことないですし、
公式戦、出たことないすよ」






「なるほどねー…あとは、沖くん!
プロフィールにはチェック入れてないけど、左利きで
投手経験がないってことは、ないよね?」






「えっと…その…」





沖は言おうか言わないか、迷っていた。
だけど、思い切って答えた。





「んと……はい。」





「登板経験は?」




「足すと5試合ぶんくらいです。
んで、中3以降はファーストしかやってません」





「ふんふん…。
他に、投手経験者はいないよね?」






「あきはー!?」





『俺は、投手経験があっても出来ねェよ。
せめて打撃練習くらいまでだ。』






「瑛君には、花井君と沖君にいろいろ教えてね?

この2人で1試合できるようにするからね!!



それじゃ、次は捕手を決めましょうか!」







その言葉を聞いた、三橋がそわそわし始めた。
どうしたんだ?






「またかよ!
世話がやけるなー…


オイ阿部背中に"2"って書いてやる!」






「いらねェっ!
俺は控えつくられても、焦らねェよ!!


つか、居なきゃ困るんだよ!!」






無理やりにでも書こうとする悠と、
抵抗しまくる阿部。




結果的に、首を占められた悠であった。







「とはいえ、キャッチャーの経験があるのは、阿部君だけなんだよね…


じゃあ、田島君どう?」




「え?俺がキャッチすか?」








捕手の第一条件は、"肩"。
それを考えてきっと悠を指名したんだろうな…。



悠の地肩は良いし、三橋との相性もいいしな。








「キャッチャーに興味ない?」





「うーん…ナイっすね。
なんか着てるもんが重そうだし…」






『悠は、なんでサードが好きなんだっけ?』





「え?だって、一番強ェ球が飛んでくるから!」





「サードより、もっと強い球が来るところあるよ!」






モモカンによるキャッチャーの面白さという話により、悠が捕手に決定した。
投手ともども単純だな…



というか、この二人が。ってところと、モモカンが巧みな技ですげェ。









結果、控え投手が沖、花井。
控え捕手が悠となった。



そして、ほかのみんなにももう1つのポジションを作り
それに合わせて練習していく。
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