短編

□Boy?Girl?
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夜、怖い。

今、すごく思った。

一晩で人ってこんなにも変わるんだね。

まあ、簡単に説明するとさ。







男の子になりました!









というわけですよ。

まあね。

確かに学校で男装したよ。

男の子って言われて、かっこいいって言われて嬉しかったけどさ…。




部屋の鏡で確認。

髪の毛も短くなってる。

なんで。いつ抜けたんだ!!どこいったんだ!!


そして、体の方も変わりまくってる。

手がごつごつしてるし、あれも、、、


やめよ。

そういうことじゃない。今は違う。







さて、まずは誰かに相談しよう。

家族に「男になった」とか言いにくいしなー。

となるとやっぱり…。



「なお、だな」





家をこっそり抜け出して、なおの家に到着。

『相談したいことがあるから行っていい?』と送っておいた。

着いた、となおに再びメッセージを送るとドアが開いた。



「おはよう」

「…?」

「おはよう」

「………どちら様ですか?」



でしょうね。

そりゃあいさつしても帰ってこないよね。

服も兄弟の借りてきたわけだし。

目がテン、とはこういう顔のことを言うんだと実感しました。



「菅なな子と申します」

「…え、っ、と…」



なおは口を押えて、目を見開いた。

あたふたしてる。



「朝起きたらこうなってました。今日はこれの相談に来ました」

「………と、とりあえず、入って…」




言われるがままに、なおの部屋へ。

いきなり男になったって来られたら誰でもこうなるよね。

とりあえず、家族は誰もいないようだから一安心。



「ななちょ、さ」

「ん?」



部屋に入るなり、なおはそばにあったクッションを抱きしめた。

何から聞かれるかなと思いながら腰かけると、なおが向かいに座ってクッションで顔を隠した。


そして、目だけを出して、一言。



「………すっごいかっこいい、かっこいいよ」


そうつぶやくと、また顔を隠した。

なお。

何を思っているかは知りませんが。








可愛いです。

世界で一番かわいいです。

恥ずかしそうにしてるけど、さっきから、さっきよりも大きな声でかっこいい、大好きとか言ってくれちゃってるし。

今だけ、男になってよかったと思いましたよ。


そして、もう一つ思った。



「…ふうー」



襲ってしまいたい。

こういうこと思うのは、最悪ってことはわかってる。

でもなんだろう、性別が変わったからかそういう目で見てしまうようになってきてる。


実際今も、ショートパンツから見えてるふとももとか、少し照れてる話し声だけで、理性がぶっ飛びそうになる。


顔が見たいな。


でも、顔を見たらそれこそ…。

まずい。このままじゃ、いけないことをしてしまいそうだ。

なおの顔が見える前にどうにかしなければ。



「ねえ、なお」

「どしたの?」

「…でかけない?」

「……え、なんで?」

「なんか、この格好で歩いてみたい、気分」

「?…そうなんだ」



我ながら、おかしな理由だったと思う。

なおは気づいてんのかな。

いや気付かれたら困るんだけど。


まあいいか。

















いつもの道をいつものペースで。

違うのは、性別だけというおかしな状況。

2人で手を繋いで歩く。

手を繋ぐのはずっと前からだけど、今日は少し戸惑ってしまう。


なんでかって今日は、『カップル』に見えるから。


普段は仲のいい友達だけど、男女となるとちょっと気持ちが違うらしい。

それはなおも同じのようで、お互いぎこちなくなる。





と、その時携帯が震えた。




「ごめん、ちょっと待っといて」

「あ、うん」



少し離れたところで電話に出る。

相手は、知らない番号。



「もしもし」

『あーもしもし』

「はい」

『ざるそば3人前』

「はい?」

『ざるそば3人前持ってきて』


「私はそば屋じゃありません!!」



なんだこれ。

せっかくいい雰囲気だったのに。

じゃなくて。

こんな間違え電話リアルにあんの、びっくりだわ。

性別が変わるとこんな事になるの?

これはまた別か。

でも、こんなの漫画でしか見たことないよ。



おかしいなと思いながらなおのもとへ戻ろうと振り返ると、男2人となおが話してる。


え、誰?


知り合いかと思ったけど、なおの表情が困惑しているところを見ると、そうではないらしい。

とすると…。




「ねえいいじゃん、ちょっとぐらいさー」

「いや、あの…」

「俺らと飯行くだけだから、ね?」

「そ、そんな…」



ナンパだ。

なおはかわいいからしょうがない。

しょうがない。


けど、なんかむかつく。

いらいらする。

そう思った時にはもう体が動いていた。



「おい、なお」

「あ、なな「何してんの?」

「…え?」

「こいつら誰?」

「なんだてめぇ」

「俺らが誘ってるから邪魔しないでほしいんですけど」

「あ?こいつは俺の彼女だよ。行くぞ」



何も理解してないなおの手を取って全速力で走り出した。

男たちが何かを言ってたけど、その言葉も聞こえないぐらいのところまで走る。

少し怖かったけど、なおを救うためだと思えば、全然平気だった。



「ちょっと、はあ、ななちょ、待って、」



なおの息が切れている。

気づかないくらい必死に走っていたことに驚く。



「あ、ごめん。いきなり」

「いいよ。それより、ありがとう。さっきの」

「ううん。なんか嫌だっただけだったから」

「え?」

「なんか分かんないんだけど、すごい嫉妬しちゃったんだよね。

 なおが男の人と話してんの。だから強引になっちゃった」

「嬉しかったよ」

「?」

「ああいうのの断り方わかんなかったから。

 すっごく、嬉しかった」

「なら、よかった」

「あ、あと」

「ん?」

「俺の彼女、っていうのも嬉しかった」



なおが俯いて、手を握ってきた。

髪の間から見える耳は、すごく赤い。

こっち向いてよ、というと顔をあげて微笑んでくれた。

それに返すように、ほほ笑んだ。

そんななおの笑顔がかわいすぎて。

勢いでなおの唇に自分のそれを重ねた。

びっくりしたからか、目を見開いた。

けど、すぐに抱きしめてくれた。










可愛いな、幸せだ。


こういうのが、『恋人』ってことなんだな。


この体も悪くないと、ちょっと思った。





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