短編集

□暗闇ノ地下鉄、幽霊少女
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そこから何十年後。
その駅のコインロッカーにまつわるある噂がながれやした。
真夜中に赤ん坊のような泣き声が聞こえる、と。
ずっとコインロッカーにいさせられやしたもんね。
自分が死んだ事なんでまだ赤ん坊の子供なんて分かりやせん。
コインロッカーからその泣き声が聞こえると言う事は、警察に届けられ病院に連れていかれたことも分かりゃしないのでいやしょう。
その赤ん坊はいつまでもいつまでも泣き続けたといわれやす。
ですが、赤ん坊のような泣き声が聞こえるという噂はそう遠くない十数年後にピタッと止まりやした。
その駅のコインロッカーに響く泣き声と共に。
その頃辺りから真夜中、誰もいるはずのない真夜中に真っ黒いセーラー服を着た女の子が現れ始めたんでやんす。
その少女の目は赤く泣き腫らされておりやした。
誰もいないコインロッカーをキョロキョロと見渡し、ゆっくりと駅の方へ出やす。
誰もいず、真っ暗の中を真っ黒い少女が歩きやす。
時代が流れるにつれ、その少女の行動範囲は地下鉄の駅から地上へ。
真夜中はもちろん、昼も行動するようになりやした。
だけど、ふらりふらりと歩く自分には誰一人も気付いていないんでやんす。
当たり前でやんすよね。死んでいやんすもん。
ですが、自分が死んだ事をしらない少女は誰かに気付いてもらえるまでふらりふらりと歩くんでやんす。
ずっと、ずっと。
ああ、そういえば順調に時代と彼女の成長が進んでいれば、もう声は出せる時期でやんしょね。
もしかしたら、誰かに声をかけているかも。
確か、彼女の霊力の成長ならば誰でも見えるはずでやんしたっけ・・・。
あ、もしかしたら声の出し方を分かった瞬間に悪さを覚えて悪霊になっちまうかもしれやせんした。
・・・あのクソガキ、もうそろそろ暴れたい時期だったか?
ありゃ?こいつぁうっかり。口が滑りやしたかね?
これは忘れてくんなせぇ。
まぁ、私も重い腰を上げて見に行ってあげやしょうかね。
・・・はて、私も物忘れが酷いようで。
何処の駅でやんしたっけ。
あそこでやんしたっけ。あ、いや、向こうの町だったか・・・。
フフフッ、もしかしたら貴方の住む町の駅かもしれやせんね。
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