短編集

□二人で一人、夜散歩
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これが自分が聞いた噺でさァ。
え?これだけじゃ意味が分からないって?
あっれ〜、分かりやせんでしたかい・・・?
・・・あっ!重要な事をお噺するのを忘れていやした。
い〜やいやいや、こりゃあ失敬。
ドッペルゲンガーを見ると近々死ぬと言う噺はご存知でやしょうか?
あれ、実はドッペルゲンガーを見るとじゃなくてダブルを見るとなんでやんす。
ダブルとはドッペルゲンガー同様、その人と同じ姿というのはお噺しやしたね?
それと、ダブルにはその人の意識がないことも。
ここから、お噺しそびれた噺でやんす。
実際、ダブルにはその人の意識はなくともちゃんとしたその人とは別のダブルの意識というものがありやす。
そして、ダブルというのはその人の偽物という存在でございやす。
考えてもみてくだせぇ。自分が二人も存在する事が何を意味するかを。
自然にもう一人が邪魔になってくるはずでやんしょう?
そして、そのダブル...偽物には本物を殺して自分が本物になろうとする意識が強まりやす。
本物を殺す為に探し、日に日に本物に近づき、最後には本物になってしまう。
これで、もう分かりやすね?
本物(教師)は偽物(ダブル)に殺されて偽物が本物になった。
つまりは、ダブルを見る=殺される=死ぬんでございやす。
本物は偽物の存在なんか知りやせん。
偽物に見つかった瞬間に殺されるんでやんすから。
そして、本物になった偽物は偽物だったことすらも記憶から消し去り本物になる。
これがドッペルゲンガーよりダブルの方が随分と性質の悪いものと納得させる要因なんでやんす。
今、自分が本物かも偽物かも分からない。
これを書いてる自分は本当に本物の自分なんでやんしょか?
これを見ている貴方は本当に本物の貴方でやんすか・・・?
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