革命ゲーム

□メリークルシミマス!
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クリスマス。イエス・キリストの誕生を祝う日。寒い冬を家の中で過ごし家族団らんを楽しむ日。
そして今日のクリスマスイブ。クリスマスの前夜祭。(糞)リア充がキャッキャウフフする日。

「リア充なんて糞くらえ!!!!」

イルミネーションが輝く街の中、周りに大勢の人が通り過ぎようが関係なくその者の声は響き渡る。

「うるさいぞ、澤口」

澤口と呼ばれた街中で叫ぶ変じn・・・ゲフンゲフン友人から1mほど距離をとって白木は文句を言った。
だって〜と返す澤口を置いて一度立ち止まった足をまた動かし始める。
もう夜の10時だというのに中央都市地区の中でも更に中心部ともいえるここでは人が減る気配はない。
むしろ、増えているのではと錯覚してしまいそうになる。

「つーか、何しにここに来たんだよ・・・」

そう、白木は澤口に呼ばれこうして出てきたものの何もやる事がなくただブラブラと歩いているだけ。
イルミネーションを楽しむにも暗い方が目に慣れやすい白木にとっては眩しく邪魔かしくただただ電気の無駄だと思う。

「そーんなの、リア充をいびりにに決まってんじゃん」

さも当然かのようなその言葉に溜息をついてアホらしと呟いた。
今日は寒くいつもよりマフラーを深くつけ口元が隠れてしまい籠った声しか出せなかったが澤口はその声でさえ聴きとった。

「もう!そんなんだから彼女出来ないんだよ〜」
「イブだってのに男の俺を誘うオメーだけには言われたかねーよ」
「でへ」

変な笑い声を出す。
おかしな奴だ。寒い中こうして歩いているだけでは何も面白いことはないのに。
う〜、寒い。と肩を少し震わせ少しずり落ちたマフラーを鼻の下まで上げる。

「あれ」

澤口が立ち止った。なにか一点を見ているようだ。
その先を白木も確認してみる。そこには見知った顔が二人分・・・。

「あれは・・・」
「鎌軌クンと池井出サンじゃないっスか〜!やっほぐぇっ」

情けない声をして一歩進めた足を止めた。
そうなったのも白木が澤口の首根っこを掴んで近寄っていくのを制したからだ。

「なにすんだよもう・・・」

文句を言いながら着崩れしたコートを直す。

「いや、あの二人って付き合ってたっけなぁと思い」
「あ〜、そういや、そんな話は聞いてないなぁ・・・仲はそれなりに良かったけど。あれ、イブに一緒におでかけ?」
「それなんだよ。ほら、イブに男女だぜ?」
「聖なる夜ならぬ性なる夜のニオイがプンプンします隊長!」
「ん〜・・・まぁ、放っておくか。会ったら会ったでめんどくさそうだし」
「えぇぇぇぇぇぇえええ!!!?」
「うっさい、気付かれるだ・・」
「あれ、蓮に与一じゃん。こんなとこでなにしてんの?」

遅かった。Uターンしかけていた身体を戻し、声の主である鎌軌の顔を見た。
さも偶然かのように。別に見つけてませんからね〜といった顔で。

「イブだしリア充をいびりに・・・的な」
「なにそれ」

澤口がそれさっき僕が言ったことじゃんと言わんばかりの目つきで訴えてくるが知ったこっちゃねぇ。

「お前等こそなにしてんだよ」

むしろそっちが気になる。
嘘だが。誰がなにをしようと関係ない白木にとってはどうでもいい。

「あ〜、これだよこれ」

そういって手に持っていた袋の中を見せてくる。
池井出も同じ袋を持っているから買い物と言ったところだろう。

「クリスマス当日とイブ限定。アニメの限定グッズ!」
「「あ、なるほど」」

納得しすぎて白木と澤口の声がハモる。
アニメ好きの二人ならば絶対に気に行くであろう代物。
池井出も先程より袋の中身が気になるようだ。
自分が買った物なのだから好きに出したらいいのに。

「あと、拓巳と葉月も来るはずだけど・・・あ、来た来た」
「おう・・・嬉しそうな顔してるね」

池井出の言葉に反応して店の出口の方を見てみると、澤口の言ったとおり楽しそうな二人が出てきた。
アニメ好きには敵いませんなぁ。

「よっ」
「あー、蓮によっちゃーん!いえーい!」
「いえーい!」

変なあだ名で澤口を呼びハイタッチをする渡部。
普段こんなテンションだっただろうか、不思議に思う。

「あと、きよちゃんと千里いればいつメン揃ったのにね〜」

池井出が残念そうに呟いた。
そのとき。一斉に鳴ったそれぞれ異なるメールの着信音。

「タイミングよすぎだろ・・・」

苦笑しつつも携帯を取り出してメールを確認する。
柊からだ。内容はこう。
『どーもぉ!柊です!皆1人寂しいイブを送っているかなぁ〜!?そんな皆さんに私からお願いがあります!中央噴水公園の噴水の前に全員・イ・マ・ス・グ・集まってください!拒否権なんてないよ!』
そして一枚の添付画像。柊と月影が噴水をバックに二人でピース。

「なんだ、楽しそうじゃん」

鎌軌が呟いた。皆もメールの内容を見て多少ながら笑っている。
白木も笑顔を気にしたがそれよりも一つ大事なことに気が付いた。

「皆、メール読んだか?」

うん、とバラバラに返される返事。
返信しようと携帯を見続けるのがほとんど。

「じゃあ、早めに移動するぞ」
「え、ちょっと待ってよ返信してるからさ」

澤口が携帯から目を離さないで言葉だけを投げる。
それを冷やかな目で一瞬だけみて白木は踵を返した。

「じゃあ、先行ってる。全員ちゃんと来いよ」

意外な行動にほぼ全員が驚いた顔で白木の背中を見た。

「ちょちょちょ、どうしたの」

葉月が白木を追いかけ、様子の変化を問う。
足を止め、軽く振り返って言葉だけを紡ぐ。

「月影の手にピエロのぬいぐるみが握られてた。赤は赤でも純粋な赤じゃなくて黒が混ざったような微妙な色の」

白木の言葉に驚きまた携帯のメールに添付されてた画像を見直す。
確かに、月影の手にはピエロのぬいぐるみが握られていた。
月影がこんなのを買う趣味はない。
それよりも全員知っていた。
赤ではなく赤黒のピエロは革命ゲームを始めた創設者の印だと。
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