【報告書】 シャーロックホームズ

□刑務所版シャ―ロックホームズ
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その男との出会いは一つのプリンだった。
パトカーを溶かす実験を行った罪で私服警察とベーカリー街を走り回っているうち、がたいの良い警官がケーキ屋からちょうど出て来た小柄な男にぶつかった。
すると男の持っていた限定10個の中の一つだったプリンはものの見事に宙を舞い、彼の栗色の頭に着地した。

警官はこう言った
「Fuck」
対する僕は多少あわれに感じてこう言った
「…大丈夫か?」

すると次の瞬間小柄な彼は、大柄な警官達の脇腹に次々と拳を決め込んだ。
そして警官達が横たわる中で、僕は彼と奇妙な事に見つめあっていた。
世界が変わったかのような、運命なのか、あの時の高揚感。
目の奥で何か足りないと今まで感じていたものが爆ぜていた。

「あのさ…君、もしかしてシャーロックホームズ?」
「そうだ。…君は、」
「ジョンワトソンだ」

彼がぐっと距離を縮めてきた瞬間、柔らかそうな髪から石鹸の香りがして胸が痛くなるのを感じた。
「はい、逮捕」
「」
手錠をされた時考えた事はたしか、彼はなんてキュートなんだろう、だったと思う。
後に僕が彼は警察ではなく軍人あがりの看守だと気づくのに時間はかからなかった。

「じゃあ僕が殴ったのは、まさか、私服警察…」
「GOOD JON」
「殴るぞシャーロック」

そして後日、僕が収容されている牢獄に彼は左遷されてやって来た。
これを運命と言わずになんと呼ぶのか、そんな言葉は生まれていない。

つづく

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