精霊の欠片
□花園の迷い子
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「ファリス、体当たり!」
『ぶい!』
『ヤッコ!?』
「あぁっ、ヤヤコマ!」
体当たりを急所に当てられ、力なく倒れ込むヤヤコマ。
ローラースケートを使いこなすそのトレーナーは、目を回しているヤヤコマをボールに戻すと賞金を渡してきた。
「その子、可愛らしいのに強いのね!」
「ありがとうございます。ファリス、お疲れ様」
『ぶいぶい!』
勝ったことが嬉しい様で、嬉々としてリアの頭によじ登ってくるファリス。リアは労うようにその頭を撫でた。
「飛び回るヤヤコマを追いかけるためにローラースケート始めて、やっとゲットしたのに......私ももっと頑張らなくちゃ!」
「ヤヤコマの動きはキレがあってよかったですよ。バトルありがとうございました」
「こちらこそ!またバトルしましょう!」
「はい」
彼女はヤヤコマを回復するためにハクダンシティの方に向かっていく。
それを見送りながら、リアはため息をついた。
「ここの通り、トレーナー多くない?そろそろ疲れてきたよ」
『ぶーい』
実際、フォルは数回のバトルの中で戦闘不能になってしまっていた。
早めにミアレシティに着きたいのだが、この調子ではなかなか進みそうにない。
こうしているあいだにも、時間は止まってくれない。どんどん日が落ちていくだろう。その前になんとかミアレシティにつきたいものだ。
「大通りそれてみようか。トレーナーとあんまり合わなくて済みそうだし」
『ぶいぶ!』
前足をあげて了解というように合図が帰ってくる。
こうして、大通りを逸れて脇道に入ることになったのだが......
まさか、こんな迷路状になっているなど、知っているはずもなく。
「......あ、あれぇ?」
数分とすれば、迷子が出来上がっていた。
『ぶい......』
ファリスも不安そうにキョロキョロと辺りを見回す。だが、視界に映るのは生垣と、白みがかってきた空のみだ。
既に大通りを逸れてから、三回目の行き止まりであった。
「だ、だれですかこんなの作った人は......恨んでやる」
『ぶ、ぶぅい?』
恨みがましくそういうと、引き気味のファリスの声が返ってきた。そんなに引かなくても......
「いそがばまわれってこういうことなのかな......とりあえず、大通りに戻ろっか?」
『ぶい!』
まあ、戻れたらの話であったが。
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