精霊の欠片

□秋色の音
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バトルを引き受けたリアはサナとポケモン達と共に街の少し広めの所へと来た。
距離を置いて立ち、ポケモン達も戦闘態勢に入る。

よし、先行はサナに譲ろうかな。


「サナって、呼んでいいかな!?」

「うん!もちろん!」

「じゃあ、サナ、そちらからどうぞ!!」

「わかった!いくよ、ハリマロンちゃん!」

『マローン!』


バトルが、始まる。

改めて気合いを入れ直し、図鑑をフォッコにかざした。
覚えている技を確認するためだ。


「よっし、ハリマロンちゃん、つるのムチ!」

『リマっ!』


サナは既に確認済みらしい。

サナの指示を受けて、ハリマロンがフォッコに向かってつるのムチを繰り出す。それは、真っ直ぐこちらに向かって来た。

素早く思考を走らせる。
今、フォッコが使える技は「ひっかく」「しっぽをふる」「ひのこ」だ。

リアは、バトルは何度かやったことがあるから、相性などはしっかり分かっていた。


「フォッコ、ひのこ!」

『フォコっ!』


フォッコから放たれた火の粉が、つるのムチを払う。


『リマっ!?』

「フォッコ、もう1回ひのこ!」

『フォッコ!』


再び、フォッコのひのこを放ち、今度はハリマロンに降りかかる。それに対する反応が遅れたのか、ひのこはハリマロンに命中した。


『リーマ...』

「ああっ!ハリマロンちゃん、もっともっと見てたかったのにー」


そして、ハリマロンはそのまま目を回して倒れた。戦闘不能だ。


『フォッコっ!』


ハリマロンを倒したことで、バトルをしていたところには得意げそうなフォッコがおすわりしていた。


「勝ったね、フォッコ!ありがとう!」

『コーっ』


リアはフォッコに駆け寄ると、ねぎらうようにその頭を撫でてからボールに戻した。

うん。フォッコはしっかり、指示を聞いてくれたし、滑り出しは上々かな。

そう思いながらボールを鞄に入れた。本当は腰に付けるべきなのだろうが、とりあえず今は三つとも鞄に入っている。

なんだか、ファリスのボールが不満げに揺れているのは見なかったことにしようと思う。

多分、バトルをしたいのだろう。まだ、やったことがないから。

サナも戦闘不能になったハリマロンをボールに戻し、こちらに歩いてきた。


「やっぱり強いね!すごいよリアりん!」

「ありがとう、サナ」

「きっとリアりんもっともっと強くなるんだね!」


なんか、期待の眼差しで見られている気がする。

リアは慌てて首を横に振った。


「私だけじゃなくて、サナも皆も、強くなるよ!一緒強くなっていこう?」

「うん!あ、そうだ、あなたのポケモン元気にしてあげるね!」

「あ、うん」


本当に、サナは優しくて素直な子だなぁと思う。
こうやってポケモンを回復するのも、人間とポケモンの信頼関係を結ぶ1つなのかもしれない。

リアはフォッコのボールをサナに渡し、回復してもらう。

折角頑張ってくれたのだ。傷ついた体を回復してあげるのも、トレーナーの役目だろう。


「はい、回復終わったよー」

「ありがとうー」

「うん。じゃああたし、そろそろ行くね!」


サナはリアにボールをしっかり手渡したあと、ぱっと街の出口の方に向いた。

勿論、それはアサメとは逆の方向だ。


「エナさんによろしくねー!リアりんが来るの、待ってるよ!」

「うん。じゃあサナ、また後でねー」

「また後でー!」


と、だんだん遠ざかりながら一旦の別れを終えると、リアはアサメタウンの方に体を向けた。

エナに手紙を届けなくてはいけない。

どうせすぐ出さなければいけなくなるので、手紙は持って歩くことにした。

ふわっと便箋からはなんとなくいい香りがしている。


「よし、サナも待ってることだし、さっさと届けて旅に出ようか」


そうつぶやいて、リアはアサメに向かって足を踏みだした。





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