精霊の欠片
□最初の仲間
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『ぶいぶいーっ!』
『......!めっ、メレシィィィィ!!』
どーーーーん......
『ぶいっ!?』
「あぁっ、メレシー!?」
『フー......』
うぅ、なんだか騒がしいんですが......
というか、爆発音が聞こえたんですけど。朝から何してんだ。
「ん......」
『!、フー?』
なにやら、不吉な音を聞いて瞼を開き、ごそごそと布団の中で寝返りをうつ。
私が目を覚ましたのに気がついたのか、メテオが前足をベッドにかけてきた。
まだまだ寝たりない私はその前足を引っ張ってメテオをベッドの中に引っ張り込んでやる。
『......フォウ!?』
「メテオあったかぃぃ......」
何やら不満げな声が聞こえたが、気にしない。さらりとメテオの反応を流し、そのふさふさの毛のに身をよせた。
メテオの体に腕を回し、きゅっと抱きしめる。
ーーーあぁ......あったかい。
まだ朝方は冷える季節なので、もぞもぞと布団にもぐり、覚めきらない眠気から再び寝ようとした。
寒いのは...苦手。
というか、朝が苦手。
寒いし、眠いし、頭がふわふわする。
いつもであれば、ファリスを抱きしめて暖をとり、寒さを凌いでいたはずだ。そして、気が済むまで起きることはほぼない。だが、どうやらいなかったらしい。さっき、懐がすーすーした。
今、起きたのも寒さのせいだろう。
...... ん?いない?
いや、寝るときは確かに抱きしめて寝たはずだ。
それにさっき、鳴き声が聞こえたような......
もしかして......!
私は飛び起きた。
「ファリス!?」
* * * * *
「......朝っぱらから何してんの」
『ぶっ......い......』
「あら、おはようリアちゃん」
「おはようございます......エナさん」
メテオをつれて慌てて2階からおりてくると、目の前にファリスが伸びているという不自然な光景が目に飛び込んできた。
そして、それの背中は、昨日さらさらだった毛がぼさぼさになっている。あーあ、折角、昨日きれいに整えたのになぁ
寝起きと、この状況により、しかめっ面をしたリアは開ききらない目で、エナを見た。
はたから見れば、睨んでいるように見えるのだが......仕方がない。
もちろん、本人は気づいていない。
「で......なんでこんなことになっているのかな?ファリスさん」
『ぶ............い』
ファリスが伸びていた正面の壁には、何かがぶつかったらしいくぼみがあった。
もしかしなくても、原因はファリスだろう。
あとで、エナさんに詳しく聞こう。
それよりも......あぁぁ、このくぼみ、どうすればいいんだ?
直すっていってもそんな壁の直し方なんて、普通トレーナーは知らない。(勿論、自分もだ)
やっぱり、弁償か。弁償するしかないか。
絶賛不機嫌のリアはファリスの首根っこを掴んで抱き上げると、エナに向かって頭を下げた。
「えぇっと......すいません。ファリスがやったんですよね。べんsy「ふふっ、気にしなくていいのよ、リアちゃん」え......?」
「これくらい慣れっこだわ」
「は、はぁ......でも......」
「大丈夫よ」
「......はい」
これが慣れっことか......どんな生活してるんだエナさん。
キッチンに立っていたエナさんは、そんなリアの疑問をよそに、鼻歌を歌いながら美味しそうな料理をテーブルに並べていた。
その中で、笑いながらも有無を言わせないような眼光で見てくるエナさん。何故そこまで言い切るのだろうか。なんだか申しわけない。
そんなこっちの気を知ってか知らずか、エナさんは最後の料理をテーブルの上に並べた。
「ほら、今日から旅にでるんでしょう?ちゃんと食べていかなきゃ!」
「あ、ありがとうございます」
背中にメレシーをひっつかせたエナさんが近寄ってきてリアの背中をぱしぱしと叩く。
それに促され、美味しそうな料理に向かって一歩踏み出した。
「あ!」
「ぐぇっ」
が、それが床につく前にエナさんに寝間着の首元を引っ張られた。
く、首がしまって......ぐるじぃですエナさん、
しかし、その手はすぐにパッと離され、体はそのまま後ろに倒れ込んでいく。
『......フー?』
だが、その体は床につくことなく、ぽふっと受け止められた。受け止めてくれたのはメテオの背中だ。ちゃんと自分の足で立ち上がったあと、労うようにメテオのせなかを撫でた。
「ありがとうメテオ」
『フォゥ』
「ああぁ、ごめんねリアちゃん!折角降りてきてくれたところ悪いんだけどさ、ちょっと着替えてきて!早く!」
「え?え、ちょ......」
と、今度は背中をぐいぐい押されて無理矢理2階への階段を登らされる。ちょ、転ぶ......
なんでこんなに慌てているのだろうか。
ガチャ...
ふと、ドアの開く音がした。
誰かと思って振り返ってみると......
「あ」
「あっ...... 」
ばっちり、目が合ってしまった。
「あぁっ、間に合わなかったかな?とりあえず、メレシー、たいあたり!」
『...!(こくり)』
「え、まっ、うおぁっ!?」
......エナさんがぐいぐい押してくるし、さっき目を合わせた時も少ししか見てないから良くは分からないが、多分、今の声はカイさんであろう。
あー、メレシーのたいあたり、痛そうだなぁ。うん。ご愁傷様です(笑)
「早く、今の内に上がって!」
「あ、えと、はい」
と、状況があまり理解できないまま、エナさんに押されるままに部屋に戻ってきた。
「身支度整えたら降りてきてね」
「はい」
パタンと静かに閉められたドアを見つめる。
今の人騒動で目がすっかり覚めてしまった。
いつもなら、ベッドが目の前にあると潜り込んで寝てしまうのだが、今は起きたばかりだからか、そんな気は起きない。
状況が分からないが、とりあえずエナの言う通り、身支度を整えることにした。
そして、今更だが、やっとエナさんが慌てていた理由が、分かった。
「......私、まだ着替えてなかった... 」
そう。爆発音のような音で目が覚めて、そのまま降りてきたのだった。
改めて部屋につけられた等身の鏡を覗くと、
髪の毛に寝癖がひょこひょこと主張していた。明らかに寝起きです。と言っているようである。
それに淡い黄色のジャージのままで...... ばっちり、目が合ってしまったのだ。
「なんだか、見苦しいところ見せちゃったな。恥ずかしい......」
未だに放心状態のファリスをメテオに渡し、
顔の火照りを紛らわすように手を動かて、身支度を整えていく。
髪の毛はもともとくせっ毛だから、広がるのは仕方ない。とりあえず、だらしなく広がっていた長い髪を適当に後ろで括った。
昨日と同じ服を着て、身支度完了だ。
「よし」
『フー?』
昨日と全く変わらない容姿になったことを確認し、リアの姿が鏡から消える。
が、その前にメテオの口にくわえられたファリスが目に入った。
「そういえば、ぼさぼだったね」
『フー!』
「ちょっと整えようか。まったく......お茶目な子だなぁ。ね、メテオ」
『フゥー』
何があったかは知らないが、ここまで目覚めないとなると、よっぽど強い衝撃だったのだろう。
自業自得だろうが、ちょっとファリスが不憫に思えてきた。
うーん、それにしても......
「お腹すいた......」
『フッ......』
ぺちっと呆れた顔のメテオがツッコミのようにリアを叩いた。
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