精霊の欠片

□あたたかいもの
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どうやらファイアローが着陸した建物はマンションのような造りらしく、何回か階段を降りた所でカイが止まった。


「ここの階の一番端っこ。俺はこれから用事があるから、もう行くよ」

「はい。ありがとうございました」


リアが頭を下げてお礼を言うと、『ソル』『ぶぃー』と2体も続けて言った。
彼女らも、お礼を言っているのだと思う。

カイはぱたぱたと手を振りながら「じゃあ」と言って、先ほどの階段を降りていった。


「さて、一番端っこだったよね」

『フー』


独り言のようにそう呟いてから、カイに言われた部屋へ向かう。信用出来る人だとは分かっていても、やはり、会ったことのない人に会うのは緊張するものだ。

手汗をかき始めた手のひらをぐっと握り締め、廊下を進む。


「どんな人だろうね」

『ぶいー』

「緊張するなぁ」

『ぶぶーい?』


『大丈夫かー?』とでもいうようにファリスが頭を叩く。

痛くない。......痛くないんだけど、コミュニケーション方法としてどうかと思うぞファリス。

まあ、いちいち叩かれて怒るのも面倒だし、そんな器が小さいわけでもない(多分)から特に何も言わない。
だからといって、叩かれて嬉しいわけではないが。

......とかなんとか考えながらファリスの背中をさする。もしかしたらこの子も不安なのかもしれない。


「あ、ここかな」


ふと気がつくと端まで来ていて、一番端の戸には部屋番号のプレートがついていた。


「ま、間違ってたら謝ればいい......よね」


人の家のインターホンを押すだけで、ここまで緊張するのもなんだか変な話だ。隣で平然としているメテオが急かすように突っついてくる。それに背中を押されるように、インターホンを押した。


[ピーンポーン...]


インターホンの音がなり、すぐにドアの向こうから軽快な足音が響いてきた。
ドアノブがガチャッと回り、開く。


「あら、いらっしゃーい」


と、陽気な声で迎えてくれたのは、三十代弱くらいに見える若い女の人だった。


「こんにちは。えと、リアというものですけど......こちらに「あ!リアちゃん!?久しぶりねー!!大きくなったなぁー」 あ......え?」


名乗った瞬間、一気にテンションがハイになった彼女。声高になり、リアの手をとって思いっきりふる。


「あー、覚えてないわよね。まだ貴女小さかったもの。この様子じゃ、姉さんからも話は聞いてないみたいね?」


リアが訝しげな顔をしたからか、とっていた手をパッと離して考える人のようなポーズをとった。というか......姉さん、って誰だ。


「誰?って顔してるわね。姉さんもなんで言わなかったのかなー」

「えと......」

「あ、ごめんね。とりあえず中に入って。その子達もそのままでいいから」

「はい。えっと、おじゃまします」

「どうぞー」


中に入れば、寒さの残る空気とはおさらばで、ほんわかと暖かい空気がリアを包んだ。
初めての場所なのに、落ち着く感じがするのは、彼女のフレンドリーな態度のせいだろうか。ポケモン達も体の力を抜いている。

なんだか、不思議な人だ。

振り返ると、ドアを閉めた彼女がこっちを見て笑っていて、[おばさん]より、[お姉さん]という感じがした。





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