精霊の欠片
□新たな旅路
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"お客様にご連絡します。まもなくこの船はカロス地方ヒヨクシティに到着致します。お忘れものの無いよう、ご注意ください。ご乗船ありがとうございました"
『フゥー』
「う...むぅ?」
ゆさゆさと揺らされる感覚と、アナウンスが聞こえ、リアは目を少し開けた。
でも、眠い。
『ぶいー!』
再び瞼を閉じようとすると、今度は脇腹に強い衝撃がくる。
「がふっ......!待って待って、ストップ!起きた、起きた!!起きたから鳩尾に突進だけはやめて!?ねっ!」
『ぶー』
第二波がくる前に文字通り飛び起きて、二回目の突進だか、体当たりの準備をしていたイーブイを必死に止める。
本当にいい眠気覚ましだが、痛いものは痛いのだ。
カロス地方到着を知らせるアナウンスが、引っ切り無しに流れているお陰で、聞き逃さずに済んだ。
先ほど、外を見てから部屋に戻って昼寝をしていたのだが、一体どれほど寝ていたのだろうか。
確認したいと思ったが、興奮がその気持ちを消し去ったので、どうでもいいことだと、脇に置いておくことにする。
呆れているアブソルを横目に、跳ねている寝癖を撫で付けて急いで船を降りる支度をする。と言っても、荷物など普通の手持ち鞄に入るくらいしかないのだが。
腰にアブソルとイーブイのモンスターボールをつけ、部屋を適当に整えてから荷物を持つ。
『フー』
「よし、外に行こうか!」
『ぶいーっ!』
リアは船室をもう一度見渡して、ひとつ頷くと、そわそわしながらもゆっくりと外へ出た。
「カロス地方...」
目の前に広がるのは、さっきと同じような快晴の空と、さっきよりもずっとずっと近くなった広大なカロスの大地。
髪を撫でていくのは変わらない、潮風。
すっと目を細め、風でしぱしぱする目を瞬きで潤す。
「やっと上陸なんだ...」
さっきのように身を乗り出しはしないが、リアの心は さっきよりずっと弾んでいた。
まだ見ぬ新しい場所...一体どんなところなんだろうか。
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