精霊の欠片

□浮かんできたものは
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あれから数日。
いつもの通りにファリスにたたき起こされ、遅めの朝食をとる。
だが今日は、遅めと言っても珍しくまだ朝と呼べる時間に起きることが出来たのだった。

早々に朝食を食べ終え、広場に向かうことにした。

ポケモンセンターからでると、見慣れてきたミアレシティの朝の雰囲気が感じられた。

ぐっと伸びをして息をつく。
今日もファリスが頭に乗っている状態だ。やっぱりちょっと重い。

「えっと、広場はこっちだったよね」

『ぶい』

やっと覚えてきた道のりをのろのろ歩く。

都会というものはせかせかした人間が多いと思っていたが、そういうことでもないようだ。
ポケモンと散歩をしている人も多い。
メェークル達が道の端で気持ちよさそうに寝ていても、誰も咎めることは無い。

イッシュ地方の都会とは全く違って、時間の流れが穏やかに感じた。

改めて周囲を眺めながら歩いていると、ふと一つの店に目が止まった。

「サロン、ド、ロージュ」

その店の看板見てみる。どうやら美容院のらしい。
後ろで歩く度に揺れていた髪を触ってみる。

自分の髪は、まあ、長い。誰が見ても長い。
そして、くせっ毛だ。いつも結んではいるが、旅の時は手入れも十分に出来ないためひどく痛んでいる。
ついでに、髪を切ったのは何時だったか思い出せない程切ってない。あぁ、こちらに来る前に前髪だけは切ったか。

まあ率直にいうと、長い髪は邪魔なのである。


「よし、切ろう」

『ぶい?』

「ん?髪の毛の話だよ。ばっさりいきたいなって思って」

『ぶい!?』

「折角ここまで伸ばしたけど、まともに手入れ出来ないならあっても邪魔なだけだしね。ということで、一旦ボールに入って欲しいんだけど……」


いつも外にいたがるファリスのことだからだめかな、と思ったが、ちらりとこちらを見てからしぶしぶ入ってくれた。

しばらく我慢してね、という意味を込めてボールをひと撫でしてから腰につける。

さて、行ってこようかな。

店内に入ると、目の前にはカウンターがあった。
黄色のメッシュをいれた黒髪のお姉さんがこちらを見て微笑んでくれる。


「いらっしゃいませ!」


黒と白でまとめられた店内には、お客さんが複数人座っていた。皆オシャレだ。ちょっと場違いだったかもしれない。


「あの、カットお願いしたいんですけど……」

「1500円になりますが、よろしいですか?」

「はい」

「では、こちらにどうぞ!」


カウンターのお姉さんが、出てきて案内してくれる。椅子に座るとお姉さんは後ろで髪を梳かし始めた。


「髪型はどうなさいますか?」

「そうですね、肩くらいまで切っていただければ、その、後はおまかせします」

「肩くらいですね。ばっさり切っちゃいますか」


曖昧で申し訳ないと思ったが、大丈夫だったようだ。今まで伸び放題だった髪が、ばっつり切られていく。
少し名残惜しい気がしなくもないが、もう頭が軽い。やっぱり名残惜しくなんてなかった。ミディアム素晴らしい。


「そうそう、知ってます?トリミアンのカット専門店!」

「トリミアンのカット専門店ですか」


そんなところ、あっただろうか……あ、あったような気がする。
ブラッシングだけで十分じゃないか?思って通り過ぎたところがそれなのかもしれない。

トリミアンしかカット出来ないのか。なんとも変わったお店だ。

因みに、トリミアンとは街中で方遇済みである。ほんとに色々なカットをしててすごい。


「今度、うちの子を連れて行こうと思ってるんですけど、カットの種類がかなりいろいろあるみたいで、どんな感じにしようかぜんっぜん決まらないんですよねえ」

「種類が多いと迷いますよね」


悪いが、こういうお話は肯定的に返すに限る。
ついていけないのだ。思うこととすればトリミアン持ってるんですか!へぇ!くらいだ。会話が続かない。

その後もこんな感じで美容師さんのお話を聞いていると、切り終わったらしい。


「はい!おつかれさまでした!」


手鏡を渡されて後ろもチェック。うん、ちょうどいい。


「これくらいでよかったですか?」

「はい!」


とっても満足だ。何しろ頭が軽い。これは髪の毛を洗うのも楽だ。来てよかった。


「新しいヘアスタイル、とってもお似合いですよ!またのお越しをお待ちしております!」

「ありがとうございました!」


カウンターでお金を払うと、お姉さんがお見送りをしてくれた。最初は気まずかったが、また来てもいいかもしれない。

店内から出ると、早速ファリスをボールから出すことにした。さて、どんな反応が返ってくるかな?


『ぶい!ぶ……!?』

「どう?自分的にはすごい頭が軽くて満足してるんだけど……」

『ぶ、ぶい!ぶい!!』


これは、似合って無いわけではないととっていいのか?いや、そういうことにしておこう。これで否定されたら、しばらく立ち直れそうにない。

とにかく、この話は終わりにしよう。お腹空いた。


「ファリス、ご飯食べに行こうか」

『ぶい!』





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