精霊の欠片

□最初の試練へ
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朝焼けの光が差し込んでくるポケモンセンターの一室......

ベッドのうえに転がっていた1つの影が動き、ベッド上から消える。

と同時にうめき声が発せられた。


「うぐっ」


リアは背中にずしりと重みを感じ、まぶたがふるりと震える。


というか、何かが背中に落ちて来たような......


『......ぶっ?』


安眠を邪魔されたことに軽く苛立ちながらも、嫌々身を起こしてみる。
と同時に、聞き覚えのある鳴き声とぽてっ、と何かが転げ落ちた音。

落ちてくる瞼を懸命に開けて、その音の正体を見る。

茶色のもふもふ......ファリスだ。


『ぶぅ〜......ぃ』


床の上で伸びてしまった彼女は、まだ眠っているらしい。

そっとベッドのうえに戻してあげると、ふかふかの毛布の上で丸くなっていた。

和やかな空気に、笑みが溢れる。


......たまには早起きもいいかな


いつもは自分が起こされる側で、皆の寝ている時は見ることなど無かった。

フォルはいつの間にか枕の下に潜り込んで心地よさそうに寝ている。

メテオはというと、既に起きていたらしかった。ファリスが落てきた衝撃で起きてしまったのかもしれない。


「おはよう、メテオ」

『フゥー』

「まだ寝てていいんだよ?」

『......』


返答はない。だが、寝る気はないようだった。

リアが立ち上がり、窓の方へ向かうと、メテオもそれにつづく。

黄金に輝く空が目にしみた。


「んー......」


床で寝ていたせいなのか、強ばってしまった体を伸ばすと、リアの隣にいるメテオも、ぶるりと体を震わせた。

そのまま窓を開けて外を眺める。

朝の冷たい風がリアとメテオを包み込み、もともと冷えていた体をさらに冷やした。


「寒い」

『......』


ぼそりと漏らすと、呆れた視線が向けられたような気がした。

もう少し風に当たっていたいような気もするが、風邪を引いてしまえばどうしようもない。

いそいそと窓を閉め、ベッド脇に戻った。


「二度寝、しようかなぁ......」

『フッ』


思わずでた本音に、嘲りを含んだようなメテオのツッコミが入った。





*****





「やっぱり眠い〜」

『フォコ?』


いつも通りの定位置に2匹を乗せ、あくびを漏らす。

あれから結局、二度寝もせずに身支度を
整えて朝食を食べ、ぐっすり眠っていた2匹をなんとか起こして今に至る。

フォルはよく眠れたらしく、元気そうに尻尾を降ったりしているが、頭のファリスは眠たいらしい。ずり落ちそうになっている。

そして、重い。


ずり落ちてしまえば、ファリスは人たまりもない。いい加減起きて欲しいなぁと思いつつも、フォルに腕から肩に移動してもらい、ファリスを腕に収める。


「いい加減起きようよ......」


まあ、人(?)のことを言えたことではないが。

メテオは外に出るなり、さっさとボールに戻ってしまった。別に構わないのだが、ちょっと隣にいないと寂しさを感じることがあるのである。

そんなに、歩くことが嫌なのか......。


ふぅ、と苦笑を漏らして、ジムへの行き方を確認しようとハクダンシティのパンフレットを取り出そうとする。だが、如何せん、ファリスを支えるのに両手が塞がってしまっていた。


「ファリス......起きて......重い」

『ぶい〜?』


だめだ......全然起きる気配がない。
このままジムに行ってもしようもないバトルをすることになる。

そう思い当たったリアは、予定を変更することにした。

とりあえず、近くのベンチに腰掛け、ファリスを横に寝かせる。そして、ハクダンシティのパンフレットをとりだすと、地図の辺りを確認してみた。

このパンフレットには、ハクダンシティ内だけでなく、周辺の観光スポットも載っているようだった。

そのページを開き適当に眺めてみる。


「......なんか眠気が覚めるもの無いかな」

『コー?』

「フォルなんかない?」

『ッコ!』


どうやら何か思い当たる物があったらしい。
同意を示したフォルはペラペラとページを捲って、ある記事を前足で叩く。


『フォコ!』

「サイホーンレース......か。よし、ここ行ってみようか」

『フォコー!』


パンフレットを閉じたリアは、寝ぼけたファリスをボールにもどす。

そして、ベンチから立ち上がり、フォッコを頭に乗せた。


「よし、行こうか」

『フォッコ!』





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