精霊の欠片
□霞んだ過去
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一方カルム達は......
「リアりん遅いねー」
「そうですね」
「日が暮れる前に森を抜けたいんだけど......」
ぼそりとつぶやいたカルムの声を最後にその場は、しんと静まりかえる。
先ほどまでは野生のポケモン達とバトルなどをしていたが、今は森の入り口の方を向いてなかなか来ないリアのことを話していた。
その場にいるサナ、カルム、トロバは顔を見合わせる。一方、ティエルノはその3人とは少し離れたところでポケモン達の動きを観察しているようだった。
「連絡はつかないのか?」
少し前からずっと不機嫌そうなカルムが二人に向けて言う。
トロバは試したようで、首を横に振った。
連絡もついていないようだ。
「もう3回はホログラムメールを送ったんですけど......」
しゅんと肩を小さくしているトロバも、そのことを聞いたサナも心配そうにしている。
この森に来て、様々なことを楽しんでいるうちにいつの間にか1時間程経っていたのだ。いくらリアが断って離れたのだとしても、1時間経っても戻って来ず、連絡も取れないのである。心配して当然だろう。
それについさっき旅立ったばかりなのだ。勿論、突然の事態に対処出来る冷静さも十分に持っているわけではない。探すにしても、出来ることは限られてくる。
まだ時間帯としては昼過ぎくらいだが、昼食を食べていない彼らは、早く街に行きたい気持ちもあった。
「仕方ない。手分けして探そう」
カルムがため息混じりにそう提案する。
「そ、そうだよね!もしリアりんに何かあったら大変だし......」
「もしそうなら、待っててもどうしようもないですね」
カルムの提案にうつむきかけていた顔を上げた二人は賛成の意を示した。
きまりだ。
「じゃあ、オレはあっちを探してみる。サナは向こうを。トロバはここで待っててくれ。入れ違いになるとまずいから」
「分かった、向こうね!」
「了解です」
「見つけたら連絡な」
「うん!」 「はい」
こうして、リアの捜索が始まった。
*****
カルムは鬱蒼と繁る木々の中を進んでいた。森のはずれにくれば、もち道が整備されているはずもなく、のびのびと育っている丈の長い雑草が足にまとわりついて鬱陶しい。
その草の中の足の動きはいらいらしているのか、いささか粗っぽく見える。
「まったく......どこに行ったんだ」
ぶつぶつと漏らす不満の声も、まあ、仕方が無いと言えるだろう。
不満をいいながらも、見つけないことには先に進まない。
もう大分離れたところまで来た。引き返そうかという考えもでてくる。
そもそも、この広い森の中を探すということ自体難しいことなのだ。それでも、この手段しか思いつかないのだから、これ以上はどうしようもない。
見捨てて先に行くわけにもいかないので、結局は探し出さなければいけないのだ。待ち合わせ場所に戻ってきてくれた方が一番あいのだが。
「はぁ......引き返すか」
重いため息をついた、その時だった。
ガサッ
近くの草むらが揺れる。
「ポケモン......?」
ケロマツのボールを手にし、いつ来てもいいように構える。
こんな時に......と不満が漏れる。つくづく、上手くいかない日だ。早く一人で旅がしたい。
揺れるのが止まり、ぴょんとポケモンと思しき物が飛び出してきた。それに合わせてケロマツのボールを投げる。
『ケロっ!』
「ケロマツ、あわ!」
『ケロ!』
『ぶいっ!?』
出てきたポケモンはそれを既のところで交わした。なかなか素早いポケモンだ。
ちゃんと見てみれば、先程いた場所では見かけなかったポケモンだった。やはり森の深くは珍しいポケモンがいるのかもしれない。
『ぶ、ぶいぶい!』
茶色の体に白のふさふさを持ったポケモンは
こちらにぴょこぴょこと近づいてきた。
図鑑を向けて見たところ[イーブイ]というらしい。
『ぶーい!』
イーブイはカルムのズボンの裾を引っ張る。なんだか、そうとう慌てているように見えた。
「どうしたんだ?」
言葉が分かるわけではないが、とりあえず訪ねてみる。
しゃがんでイーブイを見れば、イーブイはズボンを引っ張るのをやめ、少し離れたところまで離れた。
『ぶいっ、ぶーい!』
ぴょこんと耳を揺らしてひたむきにこちらを見つめてくる。
ケロマツを見てみれば、イーブイについていこうとしていた。だが、こちらをちらちらと見ている。
行きたいが、カルムが動かないからどうしようと言う感じだろうか。
「ついていけばいいのか?」
ケロマツにそう言ってみる。
『ケロケロ!』
それに肯定を示したらしいケロマツはイーブイを追いかけて行った。
カルムもそれに続く。
足場の悪いところをポケモンの速さに合わせて走ったものだから、あっという間に息が荒くなってきた。
「どこまでいくんだ......っ」
やっとイーブイが止まったと思うと、そこは、少し空間の開けた場所だった。
ポケモン達がよく来ているのだろうか。
の空間は長々と茂った草もなく、芝生のようになっていた。ずっと影にいたせいか、日差しが眩しい。
目の上に手をあて、日陰を作ると、イーブイの姿を探した。
きょろきょろとしてみると、その姿はカルムから見て左側にいた。
『ぶい!』
『ケロケーロ』
2匹の鳴き声がきこえ、その周囲が視界に映る。
カルムは、はっと息を呑んだ。
そこには、木にもたれかかって、くったりしているリアと、それに寄り添うポケモン達がいたのだった。
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