精霊の欠片
□一人と、一匹
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自然は好きだ。
時には力強く、時には優美で、私たちの心を引き込み、わだかまりをほどいて癒してくれる。人間には起こせないような奇跡を起こす......素晴らしいものだ。
それは、たとえ自然の影が薄れようとも変わらない事実。
でも、その当たり前がつまらなくなってくると、違うことを求めていくのは人間の性だろうか。
「ねぇ..........世界って、広いよね」
穏やかな風の吹き抜ける丘に座り込んだ少女は、明るい茶髪を風に揺らして、隣にいる銀の毛並みを撫でながら優しそうな声音でそう言う。
『ぶーい?』
「ん?いや、あのね、もっともっと、知りたいなぁと思って、この世界のこと。そして、私のことも」
『きゅう...』
「ついてきてくれる...かな?」
ふいに銀を撫でる手がぴたりと止まり、訝しげに思った銀が顔を上げる。彼女は不安そうな顔をしていたが、銀はそれを元気づけるように鳴いた。
『ぶいっ!』
「ふふっ、ありがとうミーアこれからも一緒だよ」
『ぶいぶいっ!』
勿論!とでも言うように鳴いた銀に見えたのは、さっきの不安そうな表情の消えた、彼女のいつもの笑顔だった。
To be continued...