短編
□印象なんてそんなもの
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最初の印象とずいぶん変わるものだなぁと私はしみじみ思っていた。
彼に対する最初の印象はずばり『鬼』。プロデューサーとしても新米中の新米な私にとっては彼の存在は恐怖でしかなかった。
何かとんでもなく間違ったことを喚き散らしていたのならまだ文句のひとつも言えた。しかし彼が言うのはいつも正論だった。正論で長々と説教してくる。流石、寺の息子。
では今は。
なんだかんだでちょっとは認めてくれたみたいで、態度は軟化している。最近じゃあ分かりにくいけど誉めてくれるようにもなった。分かりにくいけど。
それに喧嘩祭で生徒会長から聞かされた『漫画家になりたかった』という真実。一体どんな漫画を描くのかとても気になる。想像がつかない上に相手に聞いたらなんだか怒られそうで。
……あと絵も上手なんだっけ。それは是非とも伏見くんに絵を教えて差し上げて。この前見た桃季くんの絵、最早人間から逸脱してたから。伏見画伯だったから。
なんだかこうしてみると蓮巳先輩との付き合いかたが分からないですー、と鬼龍先輩に泣きついたのが遠い昔の事のよう。「蓮巳の旦那も悪いやつじゃねぇよ」と言った鬼龍先輩の言葉が当時は信じられなかった。
蓮巳先輩の方も今はなんだかんだ私をかなり高く評価してくれているみたいで、さっきも言ったように誉めてくれるしきっと頼りにもされている。
喧嘩祭の時私の頭を撫でまくっていたのは絶対それとは別次元の話だけど。
蓮巳先輩に頼りにされると妙に嬉しくなる私は、今日もひたすら誉められたくてプロデュースを頑張るのだった。