薄桜鬼【神のみぞ知る】

□裏切り者
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千里「千鶴ちゃん!何で?」

千鶴は俯いていた顔を千里に向けた。

千鶴「…好いてる人がいます」

千里「まさか、総司?!」

総司「違うってば」

千里「…じゃあ誰?」

千鶴「…すみません名前は言えません!でも、私は新選組を離れるのは嫌だから!だから…私のことは諦めて下さい…」

千里「…もしかして!」

総司「…それ以上は言っちゃ駄目だよ千里ちゃん」

総司が千里の唇に人差し指を立てた。
その指の冷たさが千里は嫌だった。

千里「…千鶴ちゃんがここにいたら危ないってわかる?人と鬼との全面戦争だって有り得る話なんだよ?それでも多くの犠牲を出してまで貫きたいの?」

千鶴「…はい。私の命は新選組の皆さんと共にあります…」

千里「…死んだら…終わりだよ?…」

総司「…それでも一緒にいたいってわからない?」

千里「…総司にはわかるって言うの」

千里はキッと総司を睨んだ。

総司「わかるよ…僕も同じだからね…僕の命は近藤さんのために使いたい!ただ何もせずに待つだけなんて人形と同じだよ。」

千里「総司!!その体でまだ戦うつもり?!」

総司「…千里ちゃんにはわかって欲しかったのに…」

千里「わからないよ!千鶴ちゃんも総司も自分のことだけじゃない!残されるほうはどんな気持ち?命を犠牲にしてまで助けたって相手はきっと喜ばないよ!」

総司「…それでも…いたいんだ…傍に…生命が尽きる、その瞬間は…その人の傍に…いたいんだ…」

千里「…バカ総司…」

総司「…知ってたでしょ?」

総司はフフフと笑って見せた。

千鶴は総司の看病が終わったら土方と合流すると決めていた。


千里「…なら私は無駄足だったのか…」

千鶴「いえ!…沖田さんの何の薬よりも千里ちゃんが来てくれたことが沖田さんには1番効いたと思います!…えと…沖田さんは千里ちゃんを…」

総司「言わないで…千鶴ちゃん…それ以上は僕の言葉だから言わないで…ゴホッゴホッ」

千里「総司!!!」

千鶴「沖田さん!」

千里は決意した。
立ち上がり総司に声をかけた。


千里「…総司…先に行って待ってるね。まだ私との勝負ついてないもんね…」

総司「…ゴホッ…うん。待ってて…必ず君に勝ってみせるから…ゴホッゴホッ」

千鶴「沖田さん、そろそろ眠ったほうが…」

千里「…総司、次に会った時は敵同士だね…本気でいくから総司も本気で来てね…」

千里は総司を見下ろした。

総司「…千里ちゃん…ゴホッゴホッ…好きだよ…」

総司は千里を見上げた。

千里「私も好きだったよ、総司…」

千里は総司に、自分の紅い襟巻きを巻いた。


そして千里は振り返ることなく
部屋を出た。


千鶴「沖田さん、いいんですか?」

総司「…聞いた?『好きだった』って過去形だったね…」

千鶴「…沖田さん…」

総司「小さい時はね、本当に僕のお嫁さんになるんだって言ったんだよ…千里ちゃん…。まあ、それ食べ物だと思ってたんだけどね、ふふふ。…あの頃に…戻りたいな…そしたらもっと早く…千里ちゃんに告げたのに…な…」


千鶴は、総司に薬を手渡した。


総司「…早く、あれを、着て近藤さん達に合流しなきゃ…それで千里ちゃんを倒さなきゃ…」

千鶴「…そうですね。」

総司と千鶴は壁にかけてある
まだ1度も袖を通していない洋装を
ずっと見ていた。



千里は総司と千鶴と別れたあと
不知火と左之助の元へと戻った。

しかし、そこには大木の桜の樹の下で
背中を預け合い、動かなくなった2人がいた。


千里「…」


桜が舞い散る中
千里は左之助の腕から赤いりぼんを解き
自分の手に巻き付けた。
そして不知火の耳から耳飾りを取り自分の耳に刺した。


千里「…痛くないや」

耳朶から流れる血が千里の首筋に流れ落ちたが、千里はそのまま風間と天霧の元へと走った。
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