薄桜鬼【神のみぞ知る】

□刺客
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新八「千里〜いるかあ?」

千里「どしたの?新八さん」

朝早くに千里の家の前に新八と左之助と平助が立っていた。

雪奈「あら、早いのね」

平助「おはよ、おばちゃん」

左之助「おばちゃんて…平助おまえなあ」

新八「雪奈さん、ちっと千里 借りてくぜ」

雪奈「はいはい、行ってらっしゃい」

千里「待って待って!何処に行くの」

平助「行ってからのお楽しみ〜てな。おばちゃんにもお土産 持ってくっからね〜」

左之助「雪奈さん、千里は何があっても守るから心配しないで待ってなよ」


千里が女だと左之助にわかってしまい、雪奈は左之助と土方を交え話をした。

雪奈は土方に話したことを左之助にも話した。

そこで一度でいいから千里に女の子の着物を着せてやりたいと、雪奈から言われた土方と左之助は夏祭りに千里を誘い出し、土方の贔屓にしている茶屋を借り千里に浴衣を着せてやることにしたのだ。


もちろん新八と平助は、ただ夏祭りに行くだけだと思っている。


雪奈「楽しんで来てね」

千里「ああ!もしかして母様もグルなの?」

左之助「そうゆうこった。行くぞ」


千里は手を振り雪奈に見送られ平助に手を引かれ、夏祭りに行ってしまった。


まさか、この後に最悪なことが待っていようとは誰も思わなかった。


神社では通りからは出店も出て、お囃子が聴こえ賑やかだった。

平助「夏祭り〜!」

新八「酒だ〜!」

左之助「まだ昼前だぞ」

千里「夏祭り?」

平助「千里、今日は夏祭りなんだよ!だから、いっぱい食うぜ〜」

平助は、はしゃぎまくり飛び跳ねて千里の手を引いた。

新八「千里は飴ちゃんか?あははは」

ダンッ!

新八「いって〜!!!」

千里に思いっ切り踏まれた新八が悲鳴をあげた。


左之助「千里、夜は俺に付き合ってくれるか?」

千里「ん?うん、いいけど…左之さんは女の子と来なくて良かったの?」

左之助や新八からは、よく 白粉の匂いがするのを千里は知っていた。

左之助「おまえだって女の子だろ?」
ボソッ

左之助は千里に耳打ちした。


千里「!」

千里はほんのり頬を染めた。



四人は夏祭りを存分に楽しんでいた。

夕刻になると左之助は千里にまた耳打ちした。

左之助「千里、抜けるぞ」

千里「え?!いま?」


左之助に手を引かれ走り去った千里の背後から新八と平助の声が聞こえていたが、左之助は強く千里の手を握り振り返らなかった。


左之助「はあ、はあ、ここまで来れば大丈夫だな」

千里「はあ、はあ、はあ、新八さんと平助には内緒なの?はあ、はあ」

2人で息を整えていると茶屋の中から土方が出てきた。

千里「え?土方さん?!」

土方「よぉ、千里。さ、入れ」

土方は千里を茶屋の女将に預けると左之助と二人で酒を飲み出した。

千里は訳の分からぬまま、茶屋の2階へと通された。


女将「さ、脱いで」

千里「はい?」

女将「浴衣に着替えるのよ」

千里「え?え?」

千里は女将により、あれよあれよと脱がされ浴衣に着替えさせられると最後に紅を小指でスッとのせられた。

女将「…これは、また♡」

女将は、いろんな女を見てきたが子供であろう年齢の千里を前にして言葉を失った。

透き通るような陶器のような白く滑らかな肌に紅い唇が妖艶だった。

浴衣になった体は丸みを帯び、人形のようであった。

女将も数十年と茶屋で働いているが、ここまでの美しい女を見たことがない。

千里の髪は父親の千耶に似て少し癖がある。あげた髪から巻いた髪が覗かせている。
その髪が、かえって千里を大人びて見せていた。


下に降りた女将は土方と左之助を2階に呼んだ。


女将「土方さん達、驚いて腰を抜かさないでよ?ふふふ」

女将が襖を開けると千里の背後から月明かりが射し込み、千里の美しさを際立たせた。

二人は喉を鳴らした。

土方「…だ、誰だ」

左之助「…千里?か?」

二人は開いた口が塞がらない。
そして千里に釘付けになっていた。

女将「ちょっと!二人共!何か言いなさいな」

土方「…あ、ああ」

左之助「…うん、そうだな」

千里「…何なんですか、これ」


ふてくされた顔もまた美しく
二人は見惚れてしまっていた。


女将「嫌だよ〜二人共、見とれすぎて穴があいちまうよ!さあ、花火が始まるよ。楽しんでおいで」

女将に言われて我に返った土方と左之助は千里を連れ出し花火を見に夏祭りの神社へと歩き出した。


千里「なんか、歩きにくい」

浴衣の裾から履きなれない下駄がカランカランと音を立てた。

土方「初めてする格好だから仕方ねえだろ」

左之助「花火が終わったら雪奈さんに見てもらえよ千里」

千里「母様に?」

土方「ああ。雪奈さんに頼まれたことなんだよ。これは」

左之助「一度でいいから女の子の着物を着せてあげたいってな」

千里「母様が…そか」

千里が照れたように俯いた。

土方「なんだ?…花火の前に見せに行きたいのか?」

千里「…うん」

左之助「しゃ〜ねえな、じゃ雪奈さんに見せてから花火な」

三人が千里の長屋へと歩いていると
新八と平助と総司が顔色を変え走ってきた。

新八「大変だ!土方さん!左之!」

平助「女と遊んでる場合じゃねえ!大変だ!」

二人が千里を見ると固まった。

新八「な、な、な、なんだよ!こんな別嬪と遊んでいたのかよ!」

平助「そ、そ、そうだ!いや、それより千里!千里は!!」

土方「何事だ」

左之助「落ち着けよ」

総司「千里ちゃんちの長屋が家事だよ。連絡もらってすぐに千里ちゃんちに行ってみたら…雪奈さんがいないんだ。」

千里「え…」

みんなで長屋へと急いだ。
もう長屋には火が周り手のつけようがなかった。

千里「母様…母様…母様!!」

左之助「落ち着け!千里」

総司「千里ちゃん、雪奈さんが行きそうな場所に行ってみよ」

平助「は?ん?」

新八「千里?千里はどこだよ」

平助と新八は浴衣を着た少女を見ることなくキョロキョロあたりを見渡していた。


千里「とにかく母様を探すのを手伝って平助!新八さん!」

総司「その子…千里ちゃんだよ」

新八・平助『えーっ!!!』


千里を連れ、みんなで近所を探し回った。
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