薄桜鬼【神のみぞ知る】

□新しい時代
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秦「無事に…行けたのか」

千歳「ほ、本当に消えた?!」

千岳「まあ、そうゆう術だからな」

八瀬姫「我々にはまだ、やることがありますよ。」

千岳「だな。子孫に宛てた文を家宝にしてもらわねえとな」


千歳達は自分達の子孫に宛て文を残し、それを一族の家宝として受け継いでいくように伝えた。

いつの、どの時代に雪奈達が送られても
必ず千里を守るよう一族の皆に伝わるよう手配した。

千岳も秦も八瀬姫も…

千里の幸せだけを願った。









一方、時を超えた二人は ー

「…か?大丈夫ですか?」

雪奈「ん…?」

「気が付かれたか!」

雪奈「あの…」

雪奈を覗き込んだ顔は、どこか懐かしいような錯覚さえおこした。

千尋「心配ご無用。私は『風間千尋』ここの主です。ここは薩摩の風間家です。先祖より貴方様のことは聞いております故に、何も心配なされるな」

雪奈「かざ…ま…?千歳の!」

雪奈は体を飛び起こした。
どことなく千歳に似た男に雪奈は安堵した。

千尋「さよう。雪村雪奈様と雪村千里様ですね?千里様は猛が…ああ、天霧の者が見ております」

雪奈「天霧…千岳の!…じゃあ、ここは…」

猛「はじめまして。私は『天霧 猛』と申します。雪奈様と千里様のことは我々、天霧家にも代々 伝わっております。お任せ下さい。」

猛と言った男もまた大きな体に似つかない優しい眼差しが雪奈には見知った顔であった。

雪奈「あの!千里は?!」

見ていると言っていた目の前の男の腕の中には千里の姿はなかった。

猛「あ、ああ。すみません…実は…」


雪奈は痛む体を必死で動かし
部屋を飛び出た。


猛「あ!雪奈殿!」


雪奈「千里!!」


雪奈は必死に捜したがどこの部屋にもいない。

そして離れにある一部屋の襖を勢いよく開けた。


雪奈「千里!?」

雪奈の目に飛び込んできたのは
金色の髪に紅い瞳を持つ美少年の布団に潜り少年の着物を掴んだまま、すやすやと眠る我が子の姿だった。

千尋「ああ、そこにいるのは私の息子の『千景』です」

雪奈を追いかけてきた千尋が少年を見た。

怖いくらい美しい少年に雪奈は礼をするのも忘れていた。


雪奈「あ、ああ!千景くん?あの、ありがとう」

風間家 嫡男の風間千景は歳は14歳になるという。

千歳に髪色は似ていたが雰囲気は、まるで正反対だったので雪奈は驚いた。

整い過ぎた顔に紅い瞳が、どこか冷たく感じた。

だが、それを一瞬で打ち消した。


千里が寝返りを打つと千景の着物を力強く掴んだでいた手が動いた。

その千里を見て確かにだが、僅かに微笑んだのを雪奈は見逃さなかった。

その顔は本当に美しく、慈愛に満ちた顔だったのだ。

それは千里を見つめる千歳と同じ顔だったのだ。



しばらくの間、体調が戻るまで雪奈は風間家に世話になることにした。

数ヶ月がたち雪奈も千里も薩摩に馴染んでいた。


千尋も猛も使用人も雪奈に良くしてくれていた。

だが、雪奈はある時 気付いた。




何故か、この家…いや里には女鬼が少ないような…
いや…女鬼は少ないとは言われているのは雪奈にもわかっていたが、あまりにも少なすぎる。

数ヶ月も世話になっているのに、まだ千尋と猛の奥方にも会っていない。


雪奈「ねえ、九寿くん。九寿くんと千景くんのお母様に挨拶しなくていいのかしら?」

雪奈は大柄な青年に聞いた。
青年の名は『天霧 九寿』千岳の子孫だ。


九寿「我々の母はー」

千景「黙れ、天霧」

九寿が口を開くと、それを千景が遮った。

雪奈「ねえ、もしかして女鬼が…攫われた…とかじゃない?」

雪奈の言葉に千景と九寿の肩がはねた。

千景「!」

九寿「…風間…」

雪奈「…話してくれない?」

雪奈は静かに千景に向き合った。


千景「…あんたが思ってる通りだ。里の女鬼達は攫われた…人間にな」

雪奈「!」

千景「…人間の世界では女だけが、かかる病が流行ってるらしい。…ただでさえ少ない女鬼を人間のゴミ虫どもめ…
人間の女達がいなければどうするか…わかるか?そうだ…人間達は女鬼に目をつけた。卑劣な手を使い買出しに出た女鬼…川や山へ行っていた女鬼…ひとり…また一人とな…そして男鬼の力を人間に貸す代わりに女鬼達の命だけは保証されている。」

雪奈「人間が…?そんなことを…」


雪奈や千耶がは、徳川家康と懇意にしていたがそんな病があるとは初めて聞いた。

雪奈「その病は以前から?」

九寿「流行り出したのは、我々がまだ幼き頃かと…」

雪奈「じゃあ、奥方様達も?」

千景「…ああ人質にされてる」

九寿「生きてさえいれば、いつか会える…みな、そう思っています。」

雪奈は、何か胸につかえたものがあるまま
この話は終わった。
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