薄桜鬼【神のみぞ知る】

□始まりの日
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八瀬姫「雪奈!しっかり!頑張るのよ!」

ここは八瀬の里ー 鬼の里

ここに今、ひとつの命が
誕生しようとしていた。


時は戦国ー
【徳川家康】の天下統一により
戦乱の世は終わりを告げていた。



身重の母の名は 【涼森雪奈(八瀬千奈)】
八瀬の里の姫の守護者
十鬼衆のひとりである。

父は 【雪村千耶】陸奥六群の鬼頭であり
また十鬼衆のひとり。








雪奈「ゔっ!っつ!」

産婆「雪奈様、頭が見えてきましたぞ!それ!もう少し!」

汗だくになり苦悶の顔をした女が
今、母になる瞬間だった。


雪奈「ゔぁあああ!」

『…ぎゃ…んぎゃ!』

産婆「ほ〜れ!雪奈様、珠のような女子でございます」


産婆が八瀬の里の姫にお娘を渡した。


八瀬姫「まあ…本当に美しい子…雪奈、よく頑張りましたね」

八瀬の里の姫ー八瀬千羽(八瀬姫)は
雪奈の実の姉である。

涼森家は子宝に恵まれず
八瀬姫の妹である雪奈が涼森家の養女として八瀬姫を守って来たのだった。


産婆「さあさ、父にも抱いてもらいましょうかね」

産婆は別室で待つ男達の元へ赤児を連れて行った。

産婆は一礼をすると1人の男の前に立った。


産婆「千耶様、おなごでございます」

千耶「ー!」

千耶は感激のあまり目に涙を溜めて言葉にならないでいた。

それをからかったのは同じ十鬼衆である 【風間千歳】と 【天霧千岳】と 【不知火秦】だった。


秦「千耶、この子の名は?決めたのか?」


妖艶な雰囲気を持つ秦が問う。


千耶は、ゆっくり頷き微笑んだ。


千耶「ああ… 決めてある…
名は 【千里】ちさと だ」



千歳「雪村千里か、いい名だ♪」

千歳は金色の髪をひょこひょこ動かし満面の笑みをしていた。

千岳「千歳もそろそろ雪奈は諦めて見合いしろよ?ははは」

大きな体の千岳もまた体格に似合わぬ笑顔で千歳をからかっていた。

千歳「はあ?!お、俺は雪奈なんか好きじゃねえし」


いつもは妖艶な笑みを浮かべる秦さえも目の前の赤子に締まらない顔だった。


秦「千歳、千里が成長したら嫁にしたらどうです?はは」



千耶「…冗談でもよしてくれ」

そんなみんなを涙目で笑う父の千耶が溢れんばかりの笑みを浮かべる。


千里は本当に美しい子だった。

赤子ながら母親譲りの大きな栗色の瞳を持ち、父譲りの藍色の髪色。そして母譲りの絹のような髪、陶器のような白い肌に桜色の唇をしていた。


この2人の娘、千里は 八瀬の里で十鬼衆達に見守られ、すくすく育つことになる。



時は流れー1年の月日が経つ。

千里は1歳になっていた。


八瀬姫「雪奈、千耶、本当に雪村の里へ帰るの?」


千耶「はい。いくら戦いが終わりを迎えたとて、また戦はいつ始まるかわかりません…いつまでも里を空けては頭領として失格ですから」


雪奈「千里も1歳になりますので」

八瀬姫「さみしくなるわね…」


八瀬姫はがっくり肩を落とし慈しむように千里の頬をなでた。


千耶「ちょくちょく顔は出します」

雪奈「八瀬姫様、お身体をお大事にして下さいね」


こうして千耶と雪奈は千里を連れ八瀬の里を出て、雪村の里へと帰郷した。
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