創作小説

□制限脳ーリミッターー
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階段を降りきると、そこには謎の広い空間が広がっていた。
上部は全て窓になっていて、博士と同じく白衣を着た人がたくさん居る。

「驚いたかい?ここの1階は戦闘練習場になっているんだ。外から見れば小さな病院だが、実際は前後左右の建物と繋がっている。」

確かに、おかしいとは思った。
ここの一帯だけ建物が集中している。
見た目は古いように見えても、コンクリートで頑丈に作られている。

「改めて挨拶しよう。我々の名はHRO(ハロ)。ヘッドリミッターの開発、そして研究を主な活動としている。彼はまだ新人だが、プロとも互角に戦える実力者だ」

《彼》と博士が指差したのはミカサ。
「彼のコードネームはナノイ」
「コードネーム?」
「彼が使っている機械の名前だ。大体、戦闘の時はコードネームで呼ぶ」
「…そもそも、何のためにヘッドリミッターが?」
「簡単に言えば、国同士の争いを無くすこと」
「争いを無くす為に私たちが戦うの?矛盾してるじゃない」
「争いは無くなりはしない。だが、争いを無いことには出来る。その為には我々が戦わなければならない。国民の代わりに」
はぁ…とみかんは溜め息を吐いた。
「さっきから言ってることが分からないし、私には関係ないことばっかり。私だって国民だよ。戦争なんかとは無縁の平和な街で暮らしてる一人の高校生。何かあると思ってここまで来たけど、無駄足だったみたい。…帰る」
博士は、私の話を止めることなく最後まで聞いていた。
何も言わずに。

みかんは、降りて来た階段に足を向けた。
「君に関係のない話なんて、していない」
博士が口を開いた。
「君だから、ここに呼んだんだ。この意味が分かるかい?君は選ばれたんだ」
「…誰に?」
博士は、苦笑しながら言った。
「何だい、まさか知らないのか?君のお母さんは誰だと思ってる?」

…何、何が言いたいの。
お母さんが何。
知らないって何を。
私は何なの。

聞きたいことが多すぎて、言葉が出てこない。
「君のお母さんのこと、知りたいんだろう?だったらうちに入ればいい。君のお母さんと最も近い場所だ」
私のお母さん?
確かに私は、幼少の頃とある施設で育った、と母から聞いている。
今の母が、実の母では無いことも、知っている。
私の、お母さん。
私を、産んだ人。
何故この人は知っている?
私のお母さんと、何か関わりがあったのか。

それを知るためには。

「…よろしくお願いします」

博士は、にっこり頷いた。
「ようこそ」
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