創作小説

□制限脳ーリミッターー
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2 NANO2

6月。
季節は体育祭シーズンだ。
人の得意不得意が大いに表れる行事でもある。
運動が苦手な人にとっては、楽しめる行事じゃないかもしれない。
一方、応援することで力になろうとする者もいる。
何が言いたいのか。

人はそれぞれ違っている。

それだけ、だ。


「あの…みかんさん。話聞いてます?」
「あ…ごめん。聞いてなかった。も一回言って」
「えっと、ですから…打ち上げという庶民の社交パーティーに」
「体育祭の?」
「そうらしいですわ」
「うーん…ハクは行く?」
「ええ、とても興味がありますから」
「じゃあ、行こうか」

私には、ハクアという友達がいる。
あだ名はハク。
ハクは、明るい茶色の髪に、いつもふわふわのカールをかけている。
お姫様のようだが、実際財閥の娘らしい。
最初、きっとそこらの男を見下すような人だと思っていた。
でも、実際は違ったみたいだ。
確かに、金銭感覚は私たちとは違うみたいだけど。
入学してすぐに、購買部をカードで買い取って自分専用にしようとしていたのだ。
そんなところから、少しクラスでは浮き気味だ。
私は、一緒に居て楽しいと思うし、ハクのことは友達として好きだ。
その時、ハクがこんな話を持ちかけてきた。
「あの、最近気になるお話を耳にしたのですが…」
「ん?何?」
「…ヘッドリミッターってご存知ですか?」
「ヘッドリミッター?何それ?」
「私も、詳しくはよく分からないのですが…こちらの学校にもいらっしゃるようですよ」
「ふーん…」
「噂では、戦争に出てるとか、そういうお話も耳に致しますわ」
「戦争?そんなのただの噂でしょ。いつの時代よ」
「ええ、私も信じられません。こんな平和なのに戦争だなんて…」
「うん。あ、もうこんな時間?帰ろうよハク」
腕時計を見ると、時刻は午後7時を回ったところだった。
「ええ、私も失礼させて頂きます。では、ごきげんよう」
「うん、じゃあねー」

全く、戦争だなんて…。
ハクがそんなことを言うとは意外だった。
よほど気にしているようだ。

まぁ…どうでもいいか。
戦争なんて、昔の話だから。
今の私たちには、関係ない。

そう思っていたのだ。

次の瞬間。
ビュン―――。
風を切る音がした。
いや、音なんかじゃない…。
私は、昔から動体視力が並外れていた。
見えたのだ。
人が自分の横を、すごいスピードで通って行くのを。
思わず振り返ると、数十メートル先のところに、確かに人が立っていた。
その人物も、こちらを振り返ってきた。
私の顔をじーっと見たと思うと、いきなりこちらに向かって走ってきた。

それも、一瞬のうちに、私のすぐ側まで来ていた。
「どこかで見たことあると思ったら、あんたじゃん」
「…え?」
「あんた、絶縁大みかんでしょ?」
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