05/19の日記
17:03
【ナルト】サスケ双子姉※死ねた
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「兄さんばかりずるい」
弟の訴える声が聞こえて足を止めた。忍務から直帰した兄に近寄ることを少しも躊躇わない弟。
弟はずるいと思った。ジョウロに入った水を揺らしながら足音を立てずにそっとふたりに近づく。私と同じ日に生まれた弟はここぞという時に上手に甘えられて羨ましかった。もし仮に私が男の子だったらサスケのようにお兄ちゃんのもとに駆け寄ったのだろうか。
「お帰りなさい」「ただいま」
兄と姉の会話はこれだけだ。
もっとお兄ちゃんとお話がしたいのにと台所で白菜を洗う母に零したら次の日、兄が私の部屋にやってきた。とても緊張して「サスケが修業したいって言ってた」と彼なら絶対言うだろう話題を持ち出してサスケのもとに行かせようとした。
そっけないかわいくない妹だ。
「お前サスケと修業しないのか」
「サスケが嫌がるの」
「久しぶりに俺と修業するか」
「うん」
これは母の計らいだ。兄と私は義務的に修業をした。その日の夕飯前に遊びから帰ってきたサスケに嫉妬されたことで少しだけ溜飲が下がった。
「姉さんずるい」
「ふふーんだ」
兄が小さく笑った。これだけを思い出した。
目の前にいる暗部姿の兄に声をかけようとして止めた。うちに遊びに来ていた従妹の喉元を切ったのだ。従妹は声を上げることなく頭から落ちてそのまま動かなかった。思わずその場に座り込む。母の名前を呼んで、ひたすら母に助けを求めた。なんでどうして近くにいるはずなのに母は来なかった。
「俺を許すな」兄はいつもの静かな声で私に告げる。暗転。右頬に床の冷たさを感じたのを最期に不帰の客となった。
(享年6歳姉の話)
うちはサスケは三人兄弟の末っ子だ。同期でそれを知る者はいない。同じ班の彼らさえ実は双子だったということを知る由も無い。彼自身それを口にする機会がなかっただけかもしれない。家族を語るにしても「もういない」で済ませていた。
彼は自身の弱さを嫌悪する。思い出すのはあの夜のことばかりだ。あの光景は忘れない。父母の遺体は重なるように、姉の遺体は兄の腕にあった。言葉をなくしたサスケの前でイタチは遺体をわざと落としてみせた。ズシャリと鈍い音を立て不自然に頭を傾げた姉の虚ろな目を見た。あれはオレだ。サスケの半身はあの時、死んだのだ。
「あんたを殺すためだけに生きてきた!!」
「…」
成長した弟をじっと眺めていたイタチは力任せに挑む姿に眉を寄せた。一人では無力であることを諭すためにも力の差を教えてやることにした。万華鏡写輪眼の月読を見せたまでは良いが自来也乱入によってなんとも中途半端な幻覚を見せてしまった。最後の最後に見せたのは妹の姿。生気はなくやはり虚ろな目をしてサスケを見つめ返してはあの日のように崩れ落ちる。これはお前自身だ。このままでは同じになるぞと脅しを含ませて幻覚は終わった。
(13歳弟の話)
「…待てって…言ってんだろうが!!なぜオレだったんだ!?なぜオレだけ残した!?なぜ逃げる!?オレに嘘をついた後ろめたさか!?それとも真実を語る勇気が無いからか!?なぜオレばかりが…死んだ今でもまだ逃げるのか!?」
後ろから怒涛の勢いで喚き散らしている弟の声は含みのあるものだった。大方の予想はつく。穢土転生で蘇ったイタチは肉体を得ようとすでに不帰の客だ。語ることを良しとしなかった。死人に口無しである。
里と一族を秤にかけて、家族と友を秤にかけて、弟と家族を秤にかけた。
条件は一人の命。
あと二人せめて母妹だけでも、
そんな感情は通じない。殺さずにおいて彼女達は苦しみながら生きるのか否。
「うちは一族のお前に、裁いてほしかった」
消える前にぽつりと呟いたのは彼の最初で最後の我侭だった。
(享年21歳兄の話)
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