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リクエスト部屋です
リクエストされた本人以外は触っちゃだめよ。読むだけよ。
◆キリリク1200:刹さま「生きていた頃の話をしよう」 




花は好きではないと前回の訪問で分かったから、今回はスリランカ産の高級茶葉を携えて露伴の家を訪ねた。
間隔を開けずにベルを二度鳴らす。
何の反応も無いのは前回と同じなので今日も豪勢な家の外観を眺めながら、しばらく待ってみる。
イタリア調の開放的な窓は魅力的だが、今は一つ残らず厚いカーテンで閉ざされている。ポーチを彩るはずの花壇の花は大半が枯れていた。
長い間外出していない証拠だ。
露伴の職業を頭の端に思い出す。籠りきりになるくらい、なにか大きな仕事でも入ったのだろうか。
俺との約束を忘れてしまうくらい…
でも、確かに、今日来ることは前回伝えたはずだ。
それともあの時先生は何だか疲れていた様だから聞いていなかったのかもしれない。
それでも約束は約束だからな。
承太郎はもう一度ベルを鳴らした。
まさか留守ってことは無いだろう。
二十数えてから――少し乱暴だが後で伯父のスタンドに直してもらえばいい――玄関の扉を自身のスタンドで叩き壊した。
固いマホガニーが砕ける音に紛れて短い悲鳴が聞こえた気がした。
やっぱり、いた。派手な音がしたんで驚いたんだろう。
階段を登って書斎を目指す。部屋のノブを捻る。開かない。鍵が掛かっているようだ。どうしてだろう。

「先生、俺だ。開けてくれ。」

「か、帰ってくれッ!あなたと話すことは何もない!」

歓迎には程遠い言葉をほとんど間を開けず、絶叫に近い声量で返された。
一体どうしたっていうんた?とにかく先生の顔が見たい。早く。
開けるぜ、と一言断わって玄関と同じように部屋のドアを叩き破る。

「あああッ!!ドアまで壊したのか、信じられない!
あ、あなたは何のつもりでこんなことッ!
もう二度と来ないでくれと伝えたじゃないか!
嫌がらせにしては度が過ぎているんじゃあないのかッ!?」

部屋に入った途端、矢継ぎ早に拒絶の言葉を浴びせられる。
一瞬言葉に詰まるが露伴の目元に酷い隈を発見して納得した。
やはり大きな仕事が入ったのだ。先生ろくに寝ていないのだな。
過労によるヒステリックは承太郎にも経験がある。

「何を言っているんだ、俺は先生が心配なだけだ。愛しているんだ。
先生こそちょっと疲れてるぜ。自分が何を言っているかも分からないんじゃないか?
ほら今日は良い茶葉を持ってきたんだ。セイロンは好きだったろう?」

「それだッ!それなんだ!僕を愛しているだと?
僕は男だぞ、穢らわしい!いい加減にしてくれ気味が悪いったらありゃしない!
セイロンが好き?どおして僕の好みまで知っているんだッ!いーや言わなくても良いさ、僕が気がついていないとでも思ったか?
アンタに覗き見されていたことくらい百も承知さ、このスカタン!
あああ悪寒が止まらないクソッ!」

承太郎は呆然とした。どうして露伴がこんなにも酷い言葉を自分にぶつけるのか分からなかった。
いくらヒステリーのせいといっても…思えばこのヒステリーも長い間続いている。
会えば会うほど酷くなっているような。
最後に優しい言葉をもらったのはいつだ?三ヶ月前?半年前?
よく思い出せない。

「良いか、よく聞け。もう我慢の限界だ。
お互いはっきりさせましょう。
僕はだ、承太郎さん。あなたの事なんて何とも思っ――」

承太郎のスタンドが拳を振るったのは無意識だった。
その先がどうしても聞きたくなくて、承太郎は露伴を殺してしまった。



承太郎と露伴―露伴邸にて

2013/11/18(Mon) 00:36 

◆キリリク1200:刹さま「死んでからの話をしよう」 




真っ暗な部屋の中、唯一水銀灯でぼんやりと照らされた露伴を見つめていると、かつて無い穏やかな気持ちに承太郎は包まれる。
ガラス越しなのが少し惜しい。だが少し前ならここまで近い距離はあり得なかったことだ。
今思えば恥ずかしがり屋だったんだろうな。だからわざと嫌がることばかり言ったんだ。俺も理解が足らなかった。
ここには誰も来ないからこれからは何の気兼ねなく愛し合える。
ものを言わない露伴は何故だか生前よりも愛おしくて、もっと早くこうしておけば良かったと承太郎は思った。
お前は何事も慎重過ぎるからいけないぜ。時には大胆にいった方が上手くいくこともあるんだ、目の前の先生の様にな。
あれから急遽財団が所有する物件の一つを研究の名目で承太郎名義に書き換えてもらった。そこは地球上のどの空間よりも居心地が良かった。
暗くて狭いが、承太郎がいて露伴がいる。
もう二度と、露伴は承太郎を傷つけるような事は言わないし、拒絶もしない。仕事もせずにずっと承太郎だけを見ていてくれる。
これ以上の幸せを承太郎は知らない。
承太郎が薄く微笑を浮かべると、ガラスケースの中の露伴は小さな空気の泡を吐き出した。
露伴も笑ってくれている気がしてますます承太郎はうれしくなった。
実際にはホルマリンに満たされた肺に、わずかに残っていた空気が圧し出されたに過ぎなかった。



承太郎とホルマリン漬けの露伴―?

「ホルマリン漬けの露伴を眺めるヤンデレ承太郎」で頂きました。
都合二本立てになりました。

2013/11/18(Mon) 00:29 

◆キリリク55:刹さま:「承太郎と露伴のお話」 



岸辺露伴はジョウタロウが欲しかった。
強く美しく誰にもなびかずミステリアスな緑の瞳のあの個体が欲しくて堪らなかった。
似たような個体で露伴はジョウスケを持っていた。
こちらもなかなかに美しかったが、やはりジョウタロウと比べると満足は出来なかった。
ジョウタロウの情報はほとんど知らなかったので露伴はジョウスケからジョウタロウが海洋物を好むことを聞き出した。
さっそく露伴は広い自宅の一室を潰して珍しい海洋物で埋め尽くした。
狙い通りジョウタロウは露伴の披露したそれに反応を示した。
今までの無関心が嘘だったかのようにジョウタロウは露伴に近づき、礼を言い、腰を下ろして露伴の用意した海の住人を長い時間じっと見つめた。
やっとジョウタロウを自分の領域に引き摺り込んだ。
露伴は勝利を確信したが、振り返った先にはもうジョウタロウの姿はそこには無かった。
始めから露伴はジョウタロウの視界に入っていなかった。
それから何度か露伴はジョウタロウが出没している現場を見かけた。
ジョウタロウは殺人鬼を追っていたり同じ緑の瞳を持った老いた個体と茶を啜っていたりと、ともかく毎度まったく別のことをしていた。
先週は共にスタンドを使うネズミを仕留めに行ったのだとジョウスケから聞いた。
それなりの金額と広い部屋を使って作ったソレをジョウタロウは稀に訪ねてくる。が長くは留まらない。
最近になってようやく、露伴はジョウタロウが自分の手に負える代物では無いことに気がついた。
ジョウタロウを縛りつけておくことなど到底誰にも出来やしないのだ。





空条承太郎とコレクション的視点で人をみる岸辺露伴―杜王町にて

2013/10/09(Wed) 23:44 

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