SSS

混部、パラレル、人外、狂った設定など何でもアリです。ご注意。
◆誰も知らない男の終わり 



金色の少年が生まれたころ、ディアボロはもう一人の自分をつくった。
これから足を踏み入れる世界に対して自分はあまりに重すぎた。軽くする必要があったのだ。
ディアボロはもう一人の自分に今後必要ないものを詰め込んだ。
好きな食べ物、好きな歌手、幼子を愛しいと思う心…。
足枷にしかならないものばかりで構成されたそれをディアボロは「ドッピオ」と名付けた。
裏の社会でドッピオは使い物にならなかった。
何度も死んでしまいそうになるのでその度にディアボロは助言を与えたり、時には替わってやらなければならなかった。
それでもディアボロはドッピオが好きだった。
ドッピオだけがディアボロを好きだった。




何度も何度も何度も何度も死んで、とうとうディアボロがその死を数えるのを諦めて、更に長い年月が経ったころ。
やっとその長い苦しみに終わりが訪れるときがきた。
それは宇宙が生まれ変わる日だった。
この世と共に死なせてくれるとはレクイエムにも情があったのだな、とディアボロは思った。
西から昇った太陽が瞬きをする間に東へと沈んでいく。
やがて加速がすべてを消し跳ばすその瞬間、ディアボロは思い出した。
好きだった花の名もジェラートのフレーバーも柔らかな木漏れ日も、かつて愛していたものぜんぶぜんぶ。
ディアボロの最後のひとかけらが消えるときディアボロはドッピオと共にいた。
悪魔と呼ばれた男も最後には人間として死んでいった。



朝になったらまた二人で、






終わりがないのが終わり―ディアボロとドッピオ

2013/10/15(Tue) 23:24 

◆自分だけが生きている不思議 


承太郎とペッシは杜王町の海岸に来ていた。
ペッシは元々ギャングで暗殺の仕事を行っていたのを承太郎が引き抜いてきた。
というのも承太郎はペッシのスタンドを一目見た瞬間にすっかり気に入ってしまったからだ。
だから戦闘になったときもペッシは傷ひとつ付けず生かしておいた。
他のギャング達はどれも大して魅力を感じなかったから、殺した。


それらが先月末の出来事だ。
なのでまだペッシには決まった住所や戸籍すらも無い。
今のところ承太郎とツインの部屋に宿泊しているが、いずれ財団に頼んでペッシが法的にまっとうな人生を送れる全てを用意してもらおうと承太郎は思っている。

「海底に沈んでいる二百グラム前後の生物を選んで釣ってくれ。」

承太郎が声をかけると、隣で大人しく水平線を眺めていたペッシはびくりと肩を震わせた。

「えっ…あっ!はい…。」

ペッシが慌ててスタンドを発動する。
表情にこそ表れないがこれから現れるそれに承太郎は緊張した。そしてペッシの手の内から現れるそのあまりに美しい造形が自身の胸を熱く貫くのを承太郎ははっきりと自覚した。
あのスタンドが欲しい。羨ましい。憧れる。
たとえ自分の物にならなくても手の届く範囲内には必ず置いておきたい。
価値もわからない人間に、まして殺しなどという馬鹿な理由で使われていい物ではない。
ペッシの釣った獲物をバケツの中に入れて二人はホテルへと引き返す。
今日は目当ての個体が手に入った。
スタンドの射程も先週よりも心なしか伸びているようだ。
やっぱり、と元暗殺者らしからぬ足音を後ろで聞きながら承太郎は思い直した。
やっぱりこの男の身辺を財団に任せるのはよそう。
どうやら本体の精神は浮き沈みが激しいようだから下手に手を出されて成長の芽を摘まれては困る。
自分がこの男のスタンドを育てるのだ。
この芸術品が自分の腕で更にまた美しくなる。
そう考えただけで承太郎はここ数年間感じえなかった幸福感に包まれた。




日本に着いてから毎晩、ペッシは寝言で「兄貴」という単語を口にする。
楽しげな時もあれば苦しげにうなされている時もある。
そういえば初めて会ったとき、ペッシは共にいた長身の男を「兄貴」と呼んでいた気がする。
面倒なスタンドを使う、あの男だ。
血縁だったのだろうか。
承太郎は男の顔を思い出そうとした。が、ろくに構いもせずに殺してしまったせいでそれは叶わなかった。
ともかく朝になったら早く忘れるよう言い聞かそう。
スタンドの成長には不要な存在であろうから。






暗殺チームの唯一の生き残りペッシと無自覚犯罪者の承太郎−杜王町にて

2013/10/12(Sat) 18:44 

◆ラバーズ戦後A 



「俺達の旅に同行してほしい」「仲間になってほしい」

大まかに纏めると承太郎はダンにこういった内容を話した。が何かにつけて「傷はまだ痛むか」だの「腹は空いてないか」だのとダンを労る様なことを付け加えるので全体的に要領を得ない内容になった。
ダンはまだ痛む頭を強引に働かせて承太郎が自分に対して好意をもっている事実に気がついた。
仲間に誘われて具合の心配をしてくれるとはまあ実際そういうことなのだ。
普段の自分であればその好意を逆手にとって利用し尽くしてやるところだ。がこの男に対しては意識の奥底まで恐怖という感情を植え付けられてしまっているからそんなことは頭を掠めさえしなかった。
そもそも自分を半殺しの目にあわせた男が何故今更自分に好意を示してくるのか。あまりに不気味だ。
ともかくダンは今後、承太郎の機嫌を窺って生きていくことに決めた。
もう二度と、この男に殴られたくなかったのだ。
だから仲間になる誘いも断らなかった。



続きます。

2013/10/09(Wed) 23:53 

◆プロシュート兄貴とペッ氏 


暗殺者であるプロシュートは二重人格者だった。
彼はいつも相棒の気弱で心優しい弟分と共にいたが、残念ながら周りにはその姿が見えなかった。
プロシュートは元々人とつるむタチでは無かったので他の暗殺者達が飲みに行ったりカードゲームに興じる間もずっと自分だけの弟分と二人で語り合っていた。
事情を知らない者はアイツは一人が好きなのだな、クールな奴だと思っていたし事情を知るものはプロシュートに好奇と侮蔑の入り交じった眼差しを向けた。
その実プロシュートは組織にとって重要な人材であった。
数少ないスタンド使いである上に、暗殺者としての腕前も超一流であったから。
なのでたとえプロシュートが何も無い空間と楽しげに会話しているくらいでは誰も何も咎めなかった。
組織としては任務さえこなせていればプロシュートが多少イカれていようが問題無いのだ。




暗チ:プロシュートと彼だけのペッシ

2013/10/02(Wed) 21:17 

◆ラバーズ戦後@ 


空条承太郎のスタープラチナによって2日間生死の境をさ迷ったダンが目覚めて最初に見たものはこの世で一番見たくない顔だった。承太郎だった。
この男に対しては怒りよりも恐怖の方が勝っていたのでダンは反射的に悲鳴を上げた。
承太郎は目覚めたダンに「良かった」と言った。
それからおもむろにこちらに手を伸ばしてきた。
てっきり殴られるものとダンは身を固くしたがその手はダンの黒髪を撫でただけだった。
その手つきがあまりにも優しかったのでダンは気味悪く思った。


自分は今、スタープラチナの射程内にいる。
そう思うだけでスティーリー・ダンの体は恐怖に震えた。
だが目の前の承太郎はそれを寒さの為と勘違いして「寒いか」とずれたシーツをダンに被せた。
ダンは逆に暑いくらいだったが、とにかく承太郎が恐ろしかったので特に訂正もせずそのまま黙って俯いていた。
承太郎はというと深い緑の瞳に狂おしい程の熱を持ってじっとダンを見つめていた。

続きます。

2013/10/02(Wed) 21:06 

◆サーフィスは木曜日が嫌い 


オレ、間田さんのコト好きっスよォ。
四六時中どーしてだかヤカンみてェにカッカしてるし、何かのはずみでプッツンくるとすぐオレを殴る。
怪我するのは間田さんの方なのに馬鹿っスねェ。
でもたまにパピコの半分くれるし機嫌の良いときはパーマンだって観せてくれるンだよなァー。
学校がある日はずっとロッカーにほったらかしだけど金曜の夕方になれば間田さんはオレを迎えに来てくれる。
ロッカーの中は窮屈だし人の噂話とか自慢話とかたまに間田さんの悪口も聞こえてきたりするから、好きじゃない。
今日は木曜日だからもう少しだけ我慢したら間田さんが迎えに来てくれる。
まだっスかね、間田さん。


とある木曜日深夜―「間田敏和」ロッカー内にて

2013/10/02(Wed) 20:27 

◆1999/12/31の出来事 A地点 


「いくら世界が滅ぶからって最後の時間をお前と二人きりなんて酷すぎる。
これじゃあまるで心中じゃないか。不吉だ。バッドエンドだ。」

恐怖の大王の襲来によって世界の滅亡が目と鼻の先に迫っている。
そのなかを仗助と露伴は向かい合って座っていた。

「一般的にこういったシュチュエーションの場合、共に過ごす相手として正解なのは恋人や家族などの近しい関係にある人間なんだ。
そういった相手を配置することで読者は感情移入しやすく作品にも深みが増す。」

「仕方ないだろうがよォ。アンタも大概かもしれねぇが俺だってヤだぜ、こんな死にかた。」

東方仗助の手には赤い印の付いた割り箸が握られている。同じものが露伴のデスクにもある。
共に最後の時を過ごす相手はクジで決まったのだ。

「だからさァ、今からその“近しい関係”っていうの?になればアンタの言うシュチュエーション的には正解になんじゃねぇの?」


岸辺露伴の脳内にごく自然にある単語が浮かんだ。それは「諦め」と読めた。
やがて地面が僅かに揺れ始めた。

「成る程。馬鹿と天才は何とやらだな。
よし。では今この瞬間から君と僕とは親友だ。
僅かな時間だがどうぞ宜しく」

「グレート」

東方仗助は微笑んでいた。
それを見た岸辺露伴も不思議と愉快な気持ちになった。
バッドエンドには違いない。読者ウケも良くないだろう。
けれどこんな結末も悪くない、そう思った。




世界滅亡寸前―杜王町岸辺露伴邸にて

2013/10/02(Wed) 20:21 

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