井浦くんと

□しんぱいうら
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家について玄関の鍵を指した辺りで携帯が鳴った。

画面を見てみると“井浦 秀”の文字。


鍵穴に指した鍵を回しながら電話に出る。



「もしもしーどしたん?」

『ん、あのーさ、ケガとか』

「ん?ケガ??」

『掠り傷とか諸々あったじゃん?』

「あぁ、心配してくれてんのか」


『…………』


あれ、聴こえなくなった。

「もしもしーもしもーし」


『そーだよ、』

「ん?」

『心配してんだよ心配浦だよ!』



「…………」


『基子もさぁ、高遠のこと心配してたからさぁ、』



「…………フッ、」


唖然していた俺は、井浦の言葉につい吹き出してしまった。


「なにそれウケる、しんぱいうらって。てか、それでわざわざ電話してきたのかよ」


なんだか妙に嬉しくって。

それがどうしようもなくまた、なんだか可笑しくって。


『そーだよ!ダメ!?友だち心配しちゃダメですか!?かなしうら!!』

「あはは、今度は悲しんでんのかよ。忙しいなー井浦って」

『うるせー!』

「あははは、…………はぁ。うん、まぁ、ありがと」

『…うん』





「嬉しうら、なんて」


自分で言ってから、また笑ったら、井浦の笑い声が耳に届いた。



しんぱいうら

(基子ちゃんにもありがとーって言っておいて)
(おー、わかった)
(将来が楽しみですね、お義兄さん)
(基子はやらん!)
(笑)

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