井浦くんと
□かわいいかわいいユキちゃん
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「こっちがユキ」
「どーもぉ」
「んでこれが透」
「……これって」
「はぁ、よろしくです」
……この二人も付き合ってんのかな。
堀さんの経由で今お友達にご挨拶なう。帰りたい。
俺の目の前にいるのは、堀さんと、薄色のミディアムヘアに手が隠れるほどのデロデロカーデを着ている“ユキ”に、紫色の短髪でまともそうな“トオル”。
てか、苗字は?
初めましてで名前は馴れ馴れしいっしょ。
「ほんとだぁ、イケメンくん」
「顔整ってんなぁ、」
「トオルおっさんくせぇ」
「吉川には負けるわ」
「なんだとー!」
「……あ、吉川さんね、」
やっと出てきた苗字。
「え、ん?」
「あぁ、苗字言ってなかったからなんて呼べばいいかわかんなかったんだろ」
「あぁ!……言ってなかったっけ?」
「言ってねぇよ」
“トオル”ははぁ、とため息をつく。
「いいわよ別に。ユキとトオルで」
「なんで堀が決めんの!いいけど!」
「……ならいいじゃない」
「俺も名前でいーよ」
え、まじかよ。呼び捨て、とかでいいんかな?くん付けとかするべき?
「………ユキさんとトオルくん」
俺が言うと、クスクスとみんな笑い出す。
頑張っていったのに笑われている!なんで!
「なんかむず痒いね、トオル」
「そーだな」
「私は?私は!?」
「……いや、苗字しか存じ上げないっす」
「京子よ、きょうこ!」
堀さん怒んないで般若が出てくるから!
「…京子さん」
「………堀は違和感ないね」
「確かに」
「な、なによー…」
「ユ、ユキ、ちゃんにトオル…」
「もー、ユキでいいって」
「俺、女の人名前で呼び捨てとか呼んだことないんで…」
「そーなの?」
「………はぁ」
「女の子に馴れてないんだね、よしよし」
ユキちゃんは俺の頭をグリグリと撫で回した。……背伸びで。
「…………」
「あれ、どーしたの高遠くん、嫌だった?」
俺が黙っていることを気にするユキちゃん。
「…………い、」
「え、なんて?」
聞き返すトオル。
「…………」
俺は黙ったまま、ユキちゃんの手を下ろして、背伸びも止めさせる。
「……高遠く、っうわ!」
何をしたかと言うと、抱きついた。
我慢できなかった。
「なにこれかわいい」
「「…え、」」
堀さんとトオルは驚きを隠せないでいる。
「…………」
ちなみにユキちゃんはびっくりしすぎて固まってる。
腕ごと抱き締めてるから抵抗できんだけかもしれんが。
「俺アホな子ちょー好き」
「うわあっ!」
俺は思わずユキちゃんの肩に顔を埋める。
「「…………」」
堀さんとトオルはなにも言えずに動けないでいる。
因みに俺はテンション上がりまくって言葉を続ける。
「やばい。なにこの小動物。ハムスターとか?ちょっと頭悪そうな雰囲気としゃべり方、そんでもって男に興味無さげな女子力のなさ!」
「………さっきから言ってることひどくない?」
そんなユキちゃんの声も、俺には届かない。
「たまんねー…、ユキちゃんちょーかわい」
このあとも、暫く抱きついたままだった。
だいぶ落ち着いて、理性が戻ってきた頃に、盛大な謝罪をさせていただきました。
かわいいかわいいユキちゃん
(トオルーなんかこないだから変にユキちゃんよそよそしいんだけど)
(お前が抱きついたからだろ)
(やっぱ嫌われたかなー)
(………それはないだろ)