井浦くんと

□変なカップル
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「あんたが高遠?」

「そーですけど」


威圧負けで敬語になってしまった。

男なら怖くない、いや、女も怖くないけど。


なんか、恐ろしそうこの人。





「………と、友達になってあげてもいーわよ」









「は?」


え、何この人。ほんとに何?

…ツンデレ初めて見た。


「い、井浦が転校生イケメンって言っててー」


あ、井浦の友達とかかな。



「そんな良いもの緑に渡してなるものかって」


「!!?」

え、友達じゃないの…?


「あ、高遠ー!」


「おわっ!!」

井浦の声がしたかと思ったら、俺の背中に突撃してきた。


タイミング悪っ!!井浦タイミング悪いよ!空気読んで!



「チッ!!」


すげぇ舌打ち。そんでもって目の前には般若らしきものが見える。




…あ、なんだ。今話してた人だった。


「堀さんどーお?井浦の言う通りイケメンでしょー」

井浦!そんなえへへってにこやかに笑ってる場合じゃない!!

お前にはあの般若が見えないのかよ!


今までそうとう喧嘩してきてたけど、ここまで顔とオーラが恐ろしい人初めて見たよ。


「堀さん早いよー」

目の前から黒い髪の薄色のカーデを来た人が走ってくる。


「宮村ぁー!この人!この人がイケメンくんの高遠だよ!」


………井浦うるさい、耳元で叫ぶなよ。


「あ!うわー、ほんとだイケメン。かっこいーね」


「………はぁ、どーも」


にこにこしてて、ほのぼのしたしゃべり方だな。

…少し顔が赤いのは気のせいだろうか。



「てか井浦おまえ、イケメンって言い回んのやめろよ」

「え、だってイケメンじゃん!今日も女子に集(たか)られてたし」


「え、すごいねー高遠くん」
「ほんとにモテモテね」


あ、般若が消えてる。

「………いや、別に。


………………あんなんキモいだけだし」


「またそんなこと言って!……井浦が、井浦がどんなに羨ましいと思っていることか」


なんか、井浦が俺の肩に顔預けてぐずりだしたんですけど。


「んなこと言っても俺は腐れビッチに集られたくねぇし」


「………え?」


「俺は純粋な方が好みだし、割りと控えめな子の方が好きだな」


「そーなんだ」

「だからもし井浦が女だったら無理。あ、宮村はいーかもしれんが」


「えー!井浦だめなん!!」

「え、ほんと?うれしー」

「チッ!!」




それぞれの声が聞こえた中。

え、舌打ち?


「………ほ、堀さん?」

おそるおそるその人の名前を呼ぶと、般若が舞い戻っていた。




「高遠まで宮村狙いか!」


なぜそーなる!!

「え!いや、そんなつもりは」


「そーだよ堀さん、あくまで女って意味なんだから」

「宮村は黙ってて」

「堀さん、そんなことで怒ってたら切りないって」

「井浦は死ね!」

「なんで?!」


…井浦の扱いひどっ!

てゆーか、

「堀さんは、宮村くんと付き合ってる、と」

「そーよ、だから何よ。横取りしようったってそうはいかないんだから」


…だからなんでそうなる。



「もー…、堀さん怒るよ?」


宮村、そんなんじゃダメじゃね?あの般若には利かなくね?


と、思ったのだが、俺の予想は大きく外れ、堀さんは「え!」と、何やら嬉しそうな顔をする。


……ドM?


「な、殴るの?いいわよ?」

「………殴らないよ」

「平手でも、」

「………しないよ」

「ビンタ!」


「だからしないって!」



なんなの?


…………ほんとになんなの?


「井浦」

「なに?」

「俺はちょっと、引いてるんだけど」

「大丈夫、俺も」



「………でも面白いから仲良くなりたいなぁ」


俺がぼそっと言ったことが聴こえていたらしく、井浦は驚いていた。




変なカップル

(高遠変わってんな、)
(………いや、あのカップルほどじゃねぇって)
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