―惑い―

□―惑い―
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エルヴィンに背を向けたまま、そっけなく答える。
リヴァイ自身も、エレンと関係を持ってからまだ日が浅く、
自分の感情などがよく分からないまま、複雑な心境だった。

「しかし、エレンか。まだまだ子供だと思っていたが…」
「…とんだマセガキだ」
「翻弄されているお前も悪くはない」
「面白がってんじゃねーよ…」

ブーツを履き、身支度を整えたリヴァイは足早に出口に向かった。

「俺はもう行くぞ」
「リヴァイ、キスを…」

ベッドサイドのソファーに腰掛けているエルヴィンに近づくと、
リヴァイは頬に手を添えてその薄い唇をそっと重ねた。
エルヴィンはリヴァイを引き寄せ、膝の上に乗せた。
厚みのある唇がゆっくりと覆う。
舌を絡めるとリヴァイもそれに応える。

「こうしていると、もう一度抱きたくなるねぇ…」
「ったく、もうお終いだ…」

リヴァイはそっと唇を離して立ち上がると、
振り向きもせず彼の部屋を後にした。

「…何だか面白い事になりそうだ…」

兵団に来てから、気持ちを打ち明けられようが、誘惑されようが、
全くもってリヴァイが揺るがず、動じなかったのを知っている。
今までに無かった初めての展開にさっきとはまるで違う不敵な笑みを浮かべた。

古城の中、陽がさす長い廊下をリヴァイは少し気だるそうに歩く。
監視下にエレンを置いてから一緒に過ごす時間が増えたせいか、
自分にはない若さゆえの真っ直ぐさ、
無謀さ、脆さ、一途さ…色々と見えてきた。
自分に向けられる屈託のない笑顔、一途な尊敬の眼差し、
かと思えば手の付けられない獣の様に感情を正面からぶつけて来る時もある…
この危なっかしいガキの世話でも妬こうという気にでもなったのか…
部下はもちろん皆大事だが、こういった感情を持ったのは初めてかもしれない。
ましてや、エルヴィン以外に身体を許してしまうとは想像もつかなかった。

「…ったく、調子狂う……」

タンタンっと軽快な足跡が聞こえ、階段を昇ってきたエレンが正面から現れた。
リヴァイの姿が見えた途端、嬉しそうな顔をして小走りに駆け寄ってきた。

―こういう時は飼い犬みたいなんだよな…


「リヴァイ兵長、ハンジさんが午後の事で探してましたよ」
「そうか、あいつはどこに?」
「もう表に居ると思います」
「他のやつらは?」
「エルドさんとグンタさんはハンジさんと一緒で、
ペトラさんとオルオさんは昼食の準備中です」
「そうか」

そっけなく、つかつかとその場を通り過ぎようとするリヴァイの腕を、
とっさにエレンは掴んだ。

「何だ…?」
「兵長、俺今日あなたを抱きます」
「サカってんじゃねーよ……」
「好きだからです」

揺るが無い瞳で真っ直ぐに見つめると、
そのまま引き寄せ、強引にリヴァイを抱きしめた。

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