―胸裡―

□―胸裡―
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アイツが壁外から帰って来た時に、一番に俺の目に飛び込んできたのは、
肩だけ残して綺麗さっぱり無くなっていた右腕だった。








エルヴィンは下馬する時もままならない状態だったので、
すぐさま近くにいた兵士が駆け寄って行った。
俺もすぐ駆け寄りエルヴィンを支えに行った。

「すまない、リヴァイ」
「馬鹿野郎…豪快に持っていかれちまいやがって…」

そのまま肩を担ぎ、本部の処置室へと向かった。
手は失ったが命がある事に安堵する反面、出血も酷く、
このままエルヴィンが無事に生きられるのか不安でならなかった。
すぐに衛生班が手術の用意を始めだした。
エルヴィンをベッドに横たわらせ、俺は一旦処置室を出た。
外にいる現場にいた兵士にその時の状況を聞きたかったのだ。
背後から来た巨人に腕ごと身体を持っていかれも、
ひるまず、兵士達に進めと言った事。
そして私の代わりはいるからエレンを連れて早く離脱しろと言った事…。

それを聞いた瞬間俺はバンッと大きな音を立てて
処置室に再び踏み込んだ。

「リヴァイ兵長、もうすぐ手術が始まりますので退席して下さい」

―私の代わりはいる―
この一言は俺の自制心を破壊させた。
エルヴィンに対しての怒りが、苦しみが、悲しみが、すべて制御出来ない。
俺は右手に力を入れて、たまらず壁に向かって拳を叩きつけた。
ドガッと大きな音を立てて壁に小さなヒビが入り、パラパラと崩れ落ちる。

「リヴァイ兵長、どうされたのですか?!」

驚いた衛生班達がざわつく。
でも自分を制御出来ない。俺はもう一度拳を壁に向かって振りかざした。
…するとベッドで肩を抑えながらエルヴィンが起き上がって言った。

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