―惑い―

□―惑い―
1ページ/5ページ


特別作戦班が根城にしている旧本部の古城。
ここに来てから早くも10日は過ぎようとしていた。

「もう行くのかリヴァイ」
「ああ…午後からエレンの実験がある」

エルヴィン滞在用の最上階の部屋。
シャワールームから出てきたリヴァイは、椅子の背もたれにタオルを投げ出し、
シャツを羽織りボタンを止めだした。

「宣戦布告…かな…」
「ん、何がだ?」

怪訝そうな顔をしてリヴァイが振り返ると、ベッドの上でうつ伏せで肘を付き、
手に頬を乗せたエルヴィンが含んだような笑みを浮かべてこちらを見ている。
こういう表情をしている時は、だいたい何かの思惑があるのをリヴァイは知っている。

「お前はモテるようだからね」
「…何の話だ?」


人類最強…
その肩書きのせいかは分からないが、リヴァイには男女問わず惹きつける物がある。
英雄視されていても驕らず、日々の鍛錬も手を抜かない。
そして何よりも部下想いでもある。
女性兵から告白をされる事もあれば、
稀に同性からも本気で告白をされる事もあった。

「エルヴィン?」

リヴァイが振り向くとエルヴィンは立ち上がりバスローブを羽織り、
リヴァイの両肩に後ろから手を置いて鏡の前に歩ませた。
後ろから抱きすくめて首筋に唇を軽く落とす。

「ほら、ここ見てごらん」

エルヴィンはリヴァイの顎に手を添えて、見えるように軽く捻り上げた。
左首筋には歯形のような跡が少しと、花弁のような紅い跡が残されているのが、
くっきりと見えた。

「――っ、あのクソガキ……」
「…驚いた、まさかエレンか?」
「ああ…ったくこんな派手に残しやがって…」

溜息混じりに呟くと、シャツのボタンを全部止め、
スカーフを巻き襟元をしっかりと隠した。

「聞いてもいいかな?どういう経緯でそうなったんだ?」

身支度を整えながら少しバツが悪そうにリヴァイは答えた。

「…真っ直ぐに気持ちをぶつけられた。
成り行きもあったが、俺も嫌じゃ無かったから拒まなかった」
「なるほどね」
「黙っていたのは謝る」
「いや、謝らなくていい。ある意味私達は割り切った仲だろう…?」

エルヴィンと所謂身体の仲になってから随分とたつ。
お互い恋愛感情がある訳ではないが、二人の間には強い信頼関係がある。
それ故に、潔癖であるリヴァイもエルヴィンとの関係に嫌悪した事はなく、
エルヴィンに求められれば、抱かれていた。
そしてお互い快楽の波を幾度となく漂ってきた。

「彼は私とお前の関係を知ってるのか?」
「まさか。そういう相手がいるとは言ったが、エルヴィンだとは言ってない」
「怖いねえ。バレたら私は噛み付かれそうだ」

くすくすと笑うエルヴィンの姿は少し楽しそうにも見える。

「私はお前をもう抱けなくなるのかな…?」
「……さあな…」

次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ