―不還―

□―不還―
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「もう…あれから一週間くらい経ちますね」
「そんなもんか、もうよくわからねえ…」
「お腹空きましたね…」
「ああ、生きてりゃハラも減る」

――ここは壁の外。
どことも分からない小さな古い小屋に、
エレンとリヴァイは二人で転がっていた。


とうとう人類は巨人を絶滅させ、勝利した。
エレンが調査兵団に入ってから五年程の歳月が流れていた。





――当日、市民は勝利に歓喜し、市街地は大騒ぎになっていた。
兵士にも酒が振舞われ、各場所で酒宴が行われていた。

場所は変わり、旧本部の古城には一足早く部屋に戻ったエレンが居た。
色々思うところが彼なりにあり、宴に長居する気が起きなかったのだ。

石段を降りてくる足跡がする…
地下室にいるエレンの元にリヴァイがやってきた。

「エレン起きてるか…?」
「リヴァイ兵長、もう酒宴から抜け出してきたんですか?」
「いや、俺は酒は飲んでない。今から用件だけ手短に言う。それに従え」

急な用件に訳が分からず、エレンは首を傾げた。
鍵を開けてリヴァイが室内に入って来た。

「落ち着いて聞くんだ。お前の処刑が内密に上層部で決定した」
「…やっぱりそうですか…」
「三日後に執行、当日まではお前に勘付かれないように、
俺が監視でここの古城に滞在させるように言われている。
まだこの事を知っているのはごく僅かの人間だけだ」

俯きながらエレンは答えた。

「…ある程度覚悟は出来てました。俺は最後の巨人だから…」
「エレン着替えろ、壁から脱出する」
「リヴァイ…兵長…?!」
「裏に馬も用意してある、当面の非常食も準備してある」
「俺を…逃がすんですか…?」

リヴァイはジャケットとベルトをエレンに差し出して言った。

「立体起動装置も用意してある、これを着ろ。俺もお前と一緒に行く」
「何言ってるんですか?!正気ですか?!」

ガタンと椅子から立ち上がり椅子が勢いよくその場に倒れた。

「エレン、上司としての最後の命令だ。従え」
「でも兵長……俺…」
「早くしろ、脱出が勘付かれにくいのは、宴で盛り上がっている今夜しかない」
「リヴァイ兵長…」

涙を堪えながらエレンは手を伸ばし、リヴァイを抱きしめた。
リヴァイは背中をポンポンっと軽く叩く。

「エレン、分かったな…?」
「分かりました…従います…」

そして警備が手薄な中、二人は壁の中を抜け出したのだった。





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