―初恋の相手は人類最強の兵士長でした―

□―初恋の相手は人類最強の兵士長でした―
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旧本部の古城でリヴァイ班の皆と生活を始めて一週間ほど経った日。
夕食後、食堂でエレンは一人でボーっと考え事をしていた。


「エレン、はい紅茶」
「…ペトラさん」

急に声をかけられてエレンは慌てて顔を上げた。
淹れ立ての紅茶が目の前に置かれる。
そして向かい側の席に彼女は腰を下ろした。
熱々のカップを手にしてふーふーと息をかけてさましている。

「ありがとうございます、頂きます」
「一週間たったけど、まだ慣れない?」
「いえ、そういう訳じゃないんです」
「心ここに在らずって感じな時があるよ」
「はは、鋭いなぁ…」

この数日エレンを悩ましている原因はリヴァイだった。
気が付けばあの人を目で追っている。
夜の施錠であの人が部屋を訪れる度に引き止めて話をしたくなる。
あの人の事がもっと色々知りたくなる。
考えているだけでもやもやして、胸が締め付けられるように苦しくなる。

「その、気になる人がいるんです」
「どんな風に?」
「その人の事を考えると、何かすごい胸が苦しくなったりとか、
俺こういう気持ち初めてで良く分からないんです」

熱いカップを手に取り、ゆっくりと口にする。

「初めてかぁなら初恋、だね」
「初恋…」
「エレンは初めて恋をして苦しんでるんだね」

ティスプーンを回しながら、頬杖をついてペトラはエレンを見つめる。

「はい、その人に俺はどう思われているかも分かりません」
「片思いかあ、切ないね」
「はい…」

湯気の立つカップを少し揺らして視線を落とした。
―そうか、俺は何時の間にかあの人に恋をしていたんだ…

「悩むよりは当たって砕けろだよ」
「ペトラさんはそうしているんですか?」
「大人は色々難しいから、そうもいかないなあ…」

ペトラはそう言って軽くため息をついた。
―恋は色々複雑なようだ。
それは身を持って痛感していた。
何せ相手は同じ男性。
たとえ相談をした所で相手が男だなんてとてもじゃないが言えない。
ずっと心の奥底にしまっておくしかないのか…

暫くの談笑の後、エレンは礼を言いお茶を飲み終えると
地下の自室へ戻って行った。
今日はリヴァイはエルヴィンと一緒に晩餐会に行っている。
夜の施錠は遅くなると聞いていた。


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